オトメイトさんのNintendo Switch用ソフト「オランピアソワレ」で松岡禎丞さん演じるキャラクター、朱砂の感想とネタバレ（あらすじ）をまとめました。
キャラクター紹介
※「オランピアソワレ」は乙女ゲーム制作ブランド『オトメイト』の作品です。
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CVは松岡禎丞さん。
コトワリの所長を若くして務める。
大変優秀で、次期【赤】の長と言われる男。
「希少な【白】を残すために、一年以内に夫を見つけてください」と、彼女を道摩屋敷から引きずり出した張本人。
更には「見つけられなかった場合は、責任を取って私がお相手します」と無表情で言い放った事から、彼女に冷血漢の鉄仮面と嫌われてしまう。
しかし「島を変えたい」と言う彼の熱い思いに触れた事で、次第に尊敬し信頼するように。
そうして彼に誘われ食事をしたりする中、彼の人となりを知り、次第に惹かれ合うように。
感想
別サイトにまとめた攻略直後の感想です。
ネタバレ（あらすじ）
与えられた運命などクソくらえです。
俺は俺が生きたいように生き、愛したい女を愛します。
一つ目の世界、二つ目の世界
一つ目の世界はイザナギとイザナミによって作られた。
二人は沢山の神を生み出したが、火の神カグツチを産んだイザナミは焼け爛れて黄泉へ。
そんな愛する妻イザナミをイザナギは迎えに行った。
そうして彼女の手を取り、黄泉比良坂を登って行く。
しかし決して振り返らないよう言われていたのだ。
所がイザナギは黄泉比良坂の途中で、耐えきれずに振り返ってしまった。
会いたくて迎えに行ったのだ。
愛する妻の顔を早く見たい想いは理解出来るだろう。
しかし振り返ったそこには、かつての妻とは別人の黄泉醜女となったイザナミがいた。
その醜さに驚いたイザナギは、慌ててその手を離し、イザナミを置いて逃げ帰った。
黄泉から戻り禊をしたイザナギから、アマテラスとスサノオ、そしてツクヨミが生まれた。
そうして鏡と刀と勾玉を授けられ、国を人々を守るようにと託されたのだ。
しかしスサノオは姉であるアマテラスを求めた。
けれどアマテラスに拒まれてしまった事に激怒したスサノオは、父から与えられた刀でアマテラスを殺したのだ。
アマテラスの天冠の鏡はふたつに割れ、アマテラスは永い眠りについた。
そうして世界は闇に覆われ滅んでしまった。
だからイザナミとイザナギの最初の子である卑流呼が、その力で二つ目の世界を作り、空には仮初の太陽を輝かせた。
月黄泉はと言えば、一つ目の世界が喪われた事でイザナギの封印を破り蘇ろうとするイザナミをその力で封じた。
アマテラスの鏡は割れ、スサノオの刀は血で穢れ、残るは月黄泉の勾玉だけだった。
故に月黄泉はそれを使い、黄泉の死に水に母イザナミを封印したのだ。
けれどこの世界には太陽はあるのに月がない。
月を作りたくとも卑流呼も世界と仮初の太陽に力を使いすぎ、また月黄泉もイザナミの封印に力を使いすぎた為、月を作る力など残っていなかった。
それでも月を作りたくて。
月黄泉は自らの右目をくりぬき、それを月として空に浮かべたのだ。
人々がいなくなった世界に、卑流呼の血から【青】を、月黄泉の血から【黄】を作った。
そうしてアマテラスを殺めた事を悔い、自ら命を絶ったスサノオの血から【赤】が生まれた。
赤渦の災
天女島の生き水で眠るアマテラス。
その血から【白】が生まれた。
故に天女島の女は太陽を祀り守る使命を持つ。
真っ白で生まれる彼女たちには、秘密があった。
魂の半身と出会い、愛し愛されるとその人の色に染まるのだ。
そうして色を得た女は、太陽に夫から得たその色を捧げる。
それを糧とし、太陽は輝いていた。
だから天女島では、島の娘が18歳を迎えた満月の夜に、天供島から夫を迎える。
船守を務めるのは天女島の女たちの面倒を見ていた月黄泉だ。
月黄泉のお眼鏡にかなった男に、白鼠がイロハバナを届け、その花を得た者は夫としてあの島に渡る事が許されるのだ。
彼女の母白亜も、そうして夫を迎えるはずだった。
しかし夫を迎えるはずのその日、夜を待たずに白亜は出会ってしまった。
自身の半身に。
それが島に流れ着いた道摩だった。
白亜が助けた道摩をすぐに愛したように、道摩もまた助けてくれた白亜をすぐに愛した。
本当に互いに半身だったのだろう。
そうして白亜は彼女を身籠った。
するとアマテラスからお告げがあったのだ。
お腹の子が18歳を迎えた時、その娘を器とし目覚める…と。
アマテラスを祀り守る女たちにとって、アマテラスの復活は喜ばしい事。
しかし白亜にとっては複雑だったかも知れない。
愛する娘が器にされると言うことは、つまりアマテラスの復活と引き換えに娘を喪うと言う事だから。
けれど彼女が5歳を迎えた頃、事件が起こった。
妻の元へと渡る道摩を怪しんだ当時の【黄】の長の葉金が天女島へ足を踏み入れたのだ。
何人も踏み荒らすことは許されない場所を。
葉金は慈眼が【赤】に帰化している事から、道摩が来た時には自ら「ぜひ【黄】に」と招き入れたのにも関わらず、島で生まれた葉金にはないマレビトならではの知恵を持つ道摩に嫉妬していた。
だから天女島へ通う事を知り、天女島の女と共謀して自分から長の座を奪おうとしていると言う疑念を持ったのだ。
そうして白亜に詰め寄った。
その娘を殺して私の妻となれ！と。
葉金には三人の子供がいたが、二人を剥で亡くし、もう一人は非時丹（後の『非時丹・涅』）で黒く染まり黄泉落ちしていた。
【黄】の長は世襲制であるが、子供のいない自分には跡を継がせる者がいない。
きっと自分の跡を継ぐのは道摩になるだろう…と案じていた。
だから何としても自分の血を引く子供が欲しかったのだ。
【黄】の長となる子供が。
そうしてその子供をあろうことか道摩の妻となった白亜に生ませようとしたのだ。
当然白亜は拒絶した。
娘を殺める事はもちろん、葉金の妻となる事も。
そうしてアマテラスを得られず激怒したスサノオの如く、葉金は白亜を殺め、その娘の彼女の事も血で穢したのだ。
幸い道摩が駆けつけ、彼女だけは命を助けられたが、母の白亜はその事件で葉金に殺され、他の白の女たちも皆命を落としたのだ。
これは後に『赤渦の災』と呼ばれ、禁足地である天女島が男たちに踏み荒らされ、島の女たちは自らの誇りを守る為に命を絶った…と伝えられるように。
天女島で生まれた男の子
道摩が天女島へと流れ着く前の事。
既にマレビトとして天供島で過ごしていた慈眼の元に、イロハバナを持った白鼠が現れた。
そうして慈眼は天女島へ渡り、朱々珀と言う女の夫となった。
そうして二人は深く愛し合い、朱々珀は子を宿した。
ちょうどその頃だ。
天女島の浜に刀が流れ着いた。
不思議に思った朱々珀はそれを拾い、月黄泉に見せた。
すると月黄泉は「スサノオの刀だ」と激怒。
朱々珀から刀を奪い取り、渦潮へと投げ捨てたのだ。
その事が原因なのだろうか。
天女島の女は【白】の女児しか産まないと言われているのに。
朱々珀の産んだ子供は赤い髪、赤い瞳を持つ男の子だった。
スサノオだと思った月黄泉は、そのまま船に乗せて流してしまうと言い出した。
しかし天女島の女たちはその男の子を守った。
この子も皆と同じ、天女島で生まれた子供だからと。
そうして男の子は天供島の父、慈眼の元で朱砂と名付けられた。
しかし慈眼は公には結婚していない。
通常天女島の女の夫となった者は、その記憶を失くすと言われている。
しかし深く愛し愛された者だけは、稀に記憶が残ると言うのだ。
そうして慈眼はその一人だったのだ。
謎に包まれた天女島。
慈眼がその天女島の女を妻とした事が知れれば、悪戯に天女島へ渡ろうとする者も出るかもしれない。
そう案じた慈眼は、天女島の女たちを守る為、朱砂を浜で拾った子供と言う事にして育てた。
後に息子にはその事を話すも、公には血の繋がりはないものとしている為、二人は人前では実の親子の素振りを見せない。
その上彼はコトワリの所長となる際に、公平をきすために父の戸籍から抜けた。
そうしてそんな彼の元にある日刀が流れ着いた。
するとその日月黄泉自らが赤まで足を運び、「それはスサノオがアマテラスを斬った呪われた刀だ」と言うのだ。
だから彼はその刀を再び海へと流した。
所が刀はまた彼の元へと戻ってきた。
何度流しても、慈眼が浜にいる時には流れてくる事はなく、彼が浜に居る時を狙って帰ってくるのだ。
更には果ての大渦と呼ばれる海の果てにある渦まで船を出し、そこに放り込んだ事もあった。
しかしその時でさえも刀は戻って来た。
彼よりも先に浜へ、まるで彼を待つように。
そうしてその刀は、手にしたその日からずっと、彼にある夢を見せた。
それは彼があの刀で、ある女を斬り殺す夢。
そんな夢を何度も何度も繰り返し。
しかし刀を手放す事を諦めたある日、鞘から抜けなかった刀が抜けるようになり、あの夢を見る事はなくなった。
そう、オランピア、彼女を殺すあの夢を。
望まぬ未来
アマテラスを殺したのはスサノオ。
けれど朱々珀があの刀を手にし、彼が生まれた事から、月黄泉は彼をスサノオの生まれ変わりとし、ずっと疎んできた。
いや、そんな生易しいものではないかもしれない。
大切な妹、愛おしい妹を奪われた憎悪。
そんな感情を向けられ続けた彼。
その上、刀には付き纏われ手放せなくなり、挙句に彼女を殺す夢にうなされ続けた。
きっと普通の精神力では、おかしくなっていたに違いない。
しかし彼は負けなかった。
そんな運命なんてクソ喰らえ！と思っていた。
俺は俺の思うように生き、思うような未来を手に入れる。
そう心に誓っていた。
だから同じ境遇の彼女の事はずっと気になっていた。
生まれながらアマテラスの器と定められた娘だから。
同じように望みもしない未来を押し付けられた二人だから。
そうして彼女の18歳の誕生日、二人は出会った。
コトワリの所長と、希少な【白】の娘オランピアとして。
誰とも目を合わせず口を聞かない美しい人形。
そんな風に言われていた彼女は、想像とは全く違う娘だった。
一年以内に夫を見つけられなかったら、責任を取って俺が相手をします…といった彼に悪態をついた。
黄泉へ行けば、「不出来」と呼ばれる色の者を「美しい色」と言い、すぐさま人気者になった。
更には唐突に黄泉から地上への手紙を配達する！と言い出す始末だ。
本当に噂とは全く違う娘だった。
そうして島に根付く悪しき慣習である色層。
それに疑問を抱き、ハズシの処刑に異を唱えた彼女は「俺はこの島を守りながら、未来に必要のないものは壊して行きたい」と言った彼の言葉に、迷う事なく賛同してくれたのだ。
「私もこの島を変えたい！」と。
ずっと思っていた。
婚姻を結ぶのなら、志を同じくする者がいいと。
誰かを愛するのなら、同じ未来を目指せる者がいいと。
だから彼が彼女に惹かれるのは、当然だったのかも知れない。
一方彼女も、最初こそ「こんな男を夫にするなんてごめんだわ！」と思っていたのに。
彼を知るにつれ、その人柄に、その強さに惹かれて行った。
いつだって彼は彼女の手を引いてくれるから。
どんな絶望的な状況であろうと、決してあきらめない。
いつも前を向いて歩いていく。
そんな姿が、彼女にはとても眩しかったのだ。
スサノオの事、アマテラスの事。
押し付けられた未来を知った事で、彼への好意を押し殺そうとした事もあった。
そんな時も彼は手を差し伸べてくれた。
だから共に乗り越えて行けると思ったのに。
月黄泉に反対され、柑南にも呪われた血の者と結ばれるのか？と言われ。
更には瓦版に二人のせいで太陽が不安定なのだと書かれたりもした。
皆が手放しで祝福してくれる訳ではない状況の中、アマテラスの復活に必要とされる鏡の半分を月黄泉が卑流呼の幽宮から盗み出し死に水に沈めたのだ。
運命だって変えて見せる
鏡を月黄泉が死に水に沈めた事により、世界は闇に包まれた。
太陽が昇らなくなってしまったのだ。
ずっと夜の世界。
人々は不安に包まれる。
そんな中、柑南がオランピアが島を呪った事が原因だと根も歯もない噂を瓦版に書いてしまった。
それでもまた皆どこかで信じていてくれたのかもしれない。
しかし彼女が舞台に上がり太陽を輝かせるために舞った時、それでも太陽が上がらないことに人々の不安は膨れ上がった。
そうして暴徒と化した島民達は、皆一様に彼女を狙う。
きっとこれは白の呪い。
ならば呪った者を消せば太陽は戻るはず。
何の根拠もない。
それでも何かのせいにするしか、不安と向き合えなかったのかも知れない。
港に船が近づくと、人々は海に飛び込み彼女を狙う。
もう助からないかも知れない。
彼女が死を覚悟した時だ。
彼が現れ島民にあのスサノオの刀を抜いた。
そうして「何人たりとも彼女を傷つける者は容赦しない」と。
「俺の使命は彼女を守ること。彼女を傷つけるものは、この刀で斬る」と。
彼の本気の態度に我を忘れた島民達は、呆けたように帰っていく。
そうしてその夜二人は結ばれた。
ずっと素直になれなかった。
太陽が消えた今、自分はアマテラスになるしかないと思っていたから。
つまりそれは彼女の死を意味する。
もう愛する人の事も、大切にしていたものも、彼女を形取る全ての記憶も感情も消えてしまうだろうから。
だから怖かったのだ。
彼を好きな気持ちを認めてしまうのが。
消えたくないと思ってしまいそうだったから。
けれど彼はいつだって、明るい方へと彼女の手を引く。
光さす方へと。
だから素直に彼への気持ちを受け入れられた。
大丈夫、彼を好きになっても構わない。
アマテラス様にならなくても、きっとなんとか出来る！と。
そうして彼女は鏡を壊してしまったと言っていた月黄泉と話した。
そこで初めて月黄泉は島のどこかに鏡を隠した事を教えてくれた。
そうしてそんな月黄泉に彼女は告げたのだ。
「朱砂を夫に決めたわ」と。
もう誰に何と言われても迷わない、怯えない。
彼と二人なら、運命だって変えて見せる。
彼女と結ばれた彼は、正式に道摩に挨拶をした。
その時道摩は告げたのだ。
アマテラスになるかも知れない娘なのだぞ？
それでも構わないのか？と。
けれど彼は「18歳の誕生日にそうはならなかった。だから本当は月黄泉殿もヒムカも、その方法を知らないのでは？」と。
更には「道摩殿ならその方法をご存知では？」と尋ねた。
しかし道摩もまたアマテラスの復活の方法は知らないと言う。
けれど道摩は先見の力で何度も二人の運命を見ようとしたと言うのだ。
けれど彼が彼女を殺す未来など見えなかったと。
ただ別な未来も見えないのだと言う道摩は「未来は定まっていない。変えられるのだ」と続けた。
そう、きっと二人なら、まだ不確定な未来を佳き方向へと変える事が出来るかも知れない。
そうして鏡を島の皆と鏡を探すことにした彼女に、道摩はまずは天女島の生き水の泉に、もう一欠片の鏡があるから、それを得るといいと教えてくれたのだ。
水の見せた記憶
道摩の助言に従い、天女島へ向かった彼女は、生き水の泉に飛び込んだ。
さほど深くないハズのそれは、けれどとても深いように感じるのだ。
そうして泉は彼女に過去の出来事を教える。
母と道摩の出会い、二人が結ばれて彼女が生まれた事。
でも声しか聞こえないそれに、彼女は気づく事が出来なかった。
ただ父にも母にも愛されていた事を知るのみで、父の声には聞き覚えがある気がしたものの、道摩だなんてその時は思いもしなかったのだ。
見つけた鏡は道摩の助言で肌身離さず身につけることにした。
きっと守ってくれると。
そうして島民と共にもう一つの鏡の破片を探す。
島民には太陽が消えた原因はその鏡が盗まれたから…と伝え、見つけた者には懸賞金を支払うとしたのだ。
同様に黄泉でも縁が懸賞金をかけて、黄泉の者も一緒に探してくれていた。
しかし一向に見つからない。
そこで彼女は月黄泉を尋ねると、彼はついに教えてくれたのだ。
鏡は死に水に沈めた…と。
死に水は飲むと剥を患うと言う。
元々天供島に剥が出るようになった原因も、月黄泉が人々に死に水を飲ませたからなのだ。
互いに互いの命を奪い、争いの絶えない様子を見かねたから。
鏡の在処は分かった。
しかし場所が場所だけにどうしたものか？と皆が頭を悩ませるも、彼は水揚げの機会で死に水をくみ上げて探すと決断。
休むよう言われた彼女が、翌朝黄泉を尋ねると、死に水はくんでもくんでも減らなかったと言う。
そうして追い討ちをかけるように、天供島を強い地震が襲った。
もう自分がやるしかない。
だって、誰かがやらねばならないことだから。
そう決意した彼女は、黄泉のみんなをクナドへと導き、璃空に避難の誘導を半ば無理やり頼み込んだ。
再び死菫城へと向かうと、お客を非難させる縁と出会った。
奈落に用事がある…と言う彼女の言葉に全てを悟った縁は「僕の花占いは月黄泉の直伝だからよく当たるんだ。言ったろう？君はとても強運だと。だから信じてるよ。必ずまた会おう」と。
そんな言葉に励まされた彼女は奈落へと向かう。
道摩が言った言葉。
まだ未来は定まって居ない。
その言葉に支えられている彼女。
定まってないのなら、自分たちの力で佳き未来を定められるハズだと。
すると奈落には道摩がおり、彼女に母を死なせたのは自分だと言うのだ。
だからお前には私を殺す理由がある。
必ず戻り私を殺すがいい…と。
死に水に飛び込む覚悟で来た彼女にそう告げた道摩。
それは道摩なりの「必ず戻れ」と言う餞の言葉だったのだろう。
そうして彼女は死に水へと身を投じた。
深く底の見えない死に水。
けれど息は苦しくない。
そうして生き水同様、死に水もまた彼女に記憶を見せる。
今度はあの赤渦の災の記憶だ。
島に黄の前長の葉金が上がり込んで、刃物で彼女の母を脅す。
道摩と天女島の女をとで、私を陥れる企みをしているのでは？と。
道摩は天女島の女を守ろうとしているだけで、決して葉金様を落とし入れようとなど…と、返す白亜。
しかし誰の言葉も葉金の耳には届かないのだろう。
どんなに白亜が説得しても、その子供を殺し、私の妻になるのだ！と言うばかり。
当然白亜は納得しない。
私の夫には道摩ただ一人、他の男の妻になどなりません！と。
ならばお前から斬り殺すと脅す葉金に、どうぞと一歩も譲らない白亜。
そうして白亜は娘を守り葉金に殺された。
そこに現れ娘を守った父道摩。
しかし最愛の妻を失った。
だからアマテラスに嘆いた。
なぜアマテラスは白を守ってくれなかったのだ？と。
だから「娘は渡さぬ！お前の器になどさせぬ！」と告げた道摩。
道摩が私の父親？
信じられない出来事に衝撃を受けた彼女。
けれど話さねばと思った。
道摩とこの事を話さなければと。
そうして無事鏡を見つけた彼女だったが、鏡は骸骨の上に乗って居たため、鏡を取る際に骸骨に彼女の指が触れた。
すると体が次第に重くなり、頭もぼんやりしてくる。
それでも必死に戻ろうともがく彼女だったが、次第に誰に会いたくて戻ろうとしているのか、彼の事を忘れてしまう。
自分が何のためにここに来たのか？島の事も忘れてしまう。
そうして自分は誰なのかさえも。
虹色の雨
だからもがくのをやめた時、彼女の髪を白い鼠が引っ張る。
「比売様、諦めてはいけません。帰らなければ！」と。
だいふくだった。
死に水の中の彼女には、だいふくの言葉が分かるものの、だいふくだと分からないし、鼠の言葉がわかる訳ないと思ってしまった。
けれどその直後、彼が彼女を抱き上げるように現れた。
彼に名前を呼ばれた時、彼女は自分が何者かを思い出した。
そうだそれが私の名前。
そして私はあなたに会いたかったんだ…と。
「だいふくも一緒だ」そう彼に告げられ、彼女は思い出した。
いつも一緒にいてくれた、大切な友達のだいふくの事を。
朱砂が、だいふくが、私を迎えに来てくれた。
絶対に帰らなければ。
私は道摩と話さなければならない。
この鏡を届けなければならない。
そうして彼に助けられ、無事に死に水から出る事が出来た彼女。
しかし水から上がった直後、苦しみ出したのだ。
すると一羽の蝶が現れ、イザナミだと名乗る。
「そのものは私の呪いに触れた。このまま朽ちてその娘は私に代わり新たな禍津女神となるのだ。さあ、スサノオよ、殺すのだ。この世界に災をもたらす者をお前が消すのだ」と。
イザナミの言葉を証明するように、彼女の顔から、何かどろっとするものが崩れ落ちる。
間違いない。
私は朽ちている。
このまま禍津女神となり、大切な人たちを死なせてしまう。
そう思った彼女は彼に頼んだ。
「朱砂、お願い。私を殺して。私でなくなってしまう前に。島を滅ぼしてしまう前に。愛するあなたの手で殺して」
けれど彼は頷かない。
元々自分が彼女を殺す運命など認めて居ない男だ。
そんな運命などクソ喰らえ！と思って居たのだ。
そして何より心から誓って居た。
何があろうとも彼女を守り抜くと。
だからそんな事はしないと言う彼は、ずっとそばにいると言うのだ。
あなたはいつだって素直じゃない。
本当はそう思って居ないはずだ。
どんはあなたであろうと、俺はずっとそばにいて、あなたを守る。
それでも世界が終わってしまう…と彼女が案じるから。
あなたの居ない世界など、終わっても構わない。
そんな世界、俺には何の意味もないのだから。
彼の言葉にアマテラスに心の中で尋ねた。
アマテラス様、彼と一緒に居たいと願う私の心は間違っているのでしょうか？と。
何度も何度も助けて欲しいと祈った。
器にすると言っていたのに、彼女の言葉に一度も応えてはくれなかったアマテラス。
しかし…彼女の問いに応えるように、空から虹色の雨が降り注いだ。
そうして光に世界が包まれていく。
黄泉にいたハズの彼女は光さす地上におり、そこにはアマテラスがいた。
私なりに人々を愛し慈しんで来たつもりでした。
けれど私は愛し愛される事を知らぬまま、13年前のあの日、自ら世界を終わらせようとしました。
それを止めたのがあなたの父上です。
幼い頃に生き水を口にしたあなたは、私と少しつながっています。
だから私はあなたを通し、人を愛する事、愛される事を知りました。
これからは本当に人々を愛し慈しむ事が出来るでしょう。
ですから私は天に帰ります。
そう言ってアマテラスは眩い光の中に消えていった。
そうしてこの世界に本当の太陽が戻り、壊れたハズの一つ目の世界も復活したのだ。
アマテラスは教えてくれた。
一つ目の世界も戻りました。
あなたの鞄の中の手紙を書いた女の子も、今頃幸せに笑っていますと。
未来は希望に満ちている
死に水は枯れてしまった。
するとその底には、桜が芽吹いていた。
それは昔カメリアが死に水に放り投げたものだ。
人形の自分では実を食べる事が出来ないと怒って。
本当は何の力も持たぬ神は消えようと思っていた。
なのに彼女に怒られてしまったのだ。
あなたが居なければ、カメリアの不調は誰が直すの？と。
だから月黄泉は奈落に留まることにした。
そして桜を見つけたことで、この桜を育てると言う新たな役目を得た。
クナドの番をしている璃空は、玄葉に声を掛けられていた。
黄泉の者を率先してして避難させてくれたんだってな？と嬉しげに。
照れる璃空に、今度一緒に飲もうぜと誘う玄葉。
共に彼の友人なのだ、きっと語り合えば分かり合い、掛け替えの無い友となる事だろう。
浜で空を見上げるヒムカは、アマテラスお帰りと声をかけていた。
そうして神であるヒムカも驚いていた。
月黄泉も自分も神なのに、アマテラスを戻す方法を知らなかった。
けれど人の子である彼女と彼がそれを遂げてしまったのだ。
人の力とは計り知れないものだと。
彼女が来ないと、忙しいのかな？と話す時貞と縁。
そこで時貞はあの日の虹の雨の話を聞かせた。
縁によると、湯屋のお客もその話で持ちきりだと言う。
だから時貞は縁を地上に見においでと誘った。
虹の雨はもう降ってないけど、太陽が今までと全く違ってとても眩しいのだと。
そんな言葉にずっと地上を避けていた縁が、それは興味深いね、一度見てみたいと。
新たな一歩を踏み出す兆しを見せていた。
彼女と彼はと言えば、道摩親子の慣れない対面に押し黙っていた。
親子と分かっても、今までの関係もあり、どうしたものかと悩んでいたのだ。
そうして彼の立ち合いの元、「父さん」と声を掛けた彼女を道摩は娘として抱きしめた。
あんな事件があり、どう接していいか分からなかったと言う道摩。
けれど今の彼女はもう気づいていた。
今まで憎んで来た様々な出来事は、皆彼女を守るために道摩がしていたことなのだと。
そして島を出ると言う道摩が、母を追おうとしている事も。
「母さんを追いかけるつもりなら、追い返されるわよ」と止めた彼女は、「天女島の事を、母さんの事をもっとあなたに教えて欲しいの。だからここに居て！それに天女島の孫の顔も見たいでしょ？」と。
だから道摩は留まることにした。
娘とまだ見ぬ孫のために。
「慈眼もあなたがいなければ、茶飲み友達がいないと寂しがりますよ。何より俺たち若輩者ばかりでは、まだまだ不安ですから」
未来の婿にまでそう言われてしまったから。
そうして彼女は夢を見た。
一つ目のの世界に彼女が先日彼と流した瓶の手紙。
あれをあの子が受け取っている夢を。
そうしていつか天供島に行きたいと父と話すその女の子の夢を。
あなたの見る夢だ。
きっと本当に起きている事だろう。
そう言ってくれた彼。
そして彼は言う。
「例の大きな船。あれを完成させれば、大渦も越えられるだろう。いつか二人で行こう、大渦の向こうへ」と。
その時はあの女の子に直接手紙を渡すのだ！と意気込む彼女。
きっとその頃には、二人にも新しい家族が出来ているかもしれない。
未来はどこまでも果てしなく希望に満ちている。
だって二人は知っているから。
人の力でなんでも佳き方向に変えていけるのだと。
一人では何も出来なくても、支えてくれる半身が隣にいれば、世界はきっと変えられる。
Badネタバレ（あらすじ）
その他のキャラのネタバレ（あらすじ）
璃空
天草四郎時貞
縁
玄葉
ヒムカ
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