ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~【平知盛】

この記事は約28分で読めます。
Nintendo Switch用ソフト 
ブランド:アイディアファクトリー 
ジャンル:女性向け恋愛ADV 
発売日:2020年9月19日

オトメイトさん、REDさんのNintendo Switch用ソフト「ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~」で福山潤さん演じるキャラクター、平知盛の感想とネタバレをまとめました。

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キャラクター紹介

※「ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~」は乙女ゲーム制作ブランド『オトメイト/RED』の作品です。
 バナーの画像はこちらからお借りしております。

CVは福山潤さん。
平清盛の息子で重衡の兄。
初陣は5歳の時で、幼い頃より戦でも活躍している知将。

弁慶を捕らえに出た主人公が、偶然母の屋敷の近くを通りかかり、母とその子どもたちの会話に涙した時、その涙に心を奪われた彼。
月のように美しいと。
その後、五条橋で彼女のあの力を見た事で、より彼女に興味を示すように。

他の者と違い、最初に会った段階で、彼女が女性である事に気づいていた聡い人。
源氏の姫として自身の妻として迎えたいと、次第に彼女に執着するように。

感想

知盛の感想をいくつかの項目に分けてまとめました。

ビジュアルについて

すごく好みでした。
キャラの画像を初めて見た時に一目惚れしました。
しかも声も大好きな福山さんという事で、攻略を楽しみにしていたキャラ。

実際に攻略してみて、他のキャラのシナリオで、なかなかの悪役ポジションだったのも手伝い、すごーく良かったです!

性格について

掴みどころのない人でした。
悪役ポジションで他のキャラのシナリオに出てくる時も、そこまで悪い人に思えないし。
不思議な人でした。

私の中ではコルダの天宮さんのようでした。
彼は妖精の国に行ってしまいそうな人でしたが(笑)、知盛さんもこの世に根ざしていないような、そんな印象を受けました。
多分『生きる』という事への執着が薄いからなのかな?

そんな所も、なんか心配で、傍で見張っていたくなる人でした。

恋人として

結ばれてからが本当に甘いんです。
むちゃくちゃ甘いし、すごい愛してくれるのです。
なので彼と恋人になりたいと心から思いますし、妻にして欲しいなと思いました。

きっとずっとあんな風に、沢山愛して傍にいてくれるのかな?と思える人でした。
モテる人だし、本当に素敵なのに、きっとずっと変わらず愛してくれると信じさせてくれる所が、すごいなって思いました。

仲間として

敵なんですよね、立ち位置的に。
それでも一緒に旅したりしたのが楽しかったし、信頼出来る人なので、一緒に平家方として戦って見たかったな…とも思いました。

妻になる方が理想ですが(笑)、仲間として共にあるのもいいなと思える人です。

最後に…

びっくりするくらい良かったです。
彼個人が好きというだけでなく、シナリオとしてのまとまりと言うか、終わり方が大変理想的だなと思えたのです。

悪役ポジションでもそこまで憎めず、他のキャラのシナリオでも、なんとなく気になる存在だった彼。
今回彼のシナリオで、色々と知る事が出来て良かったなって思います。

語りたい事は色々あるのですが、ネタバレにならないようにと考えると難しくて。
私の伝えたい事はネタバレに込めようと思いますので、よければそちらをご参照ください。

ネタバレ(あらすじ)

生きたいと生まれて初めて思ったのだ。
お願いだ、泣くより笑ってくれないか。
私はそなたの笑う顔が見たくて、共に生きると決めたのだから。

力の根源と彼女の正体

平家の栄華の時代を築き上げた平清盛。
その父忠盛は伯耆国(ほうきのくに)で願いを叶えてくれる神を見つけた。
その者は目が見えず、耳が聞こえず、口をきくことも出来ず、更には立つ事もままならない。
人ではない、異類の者だ。

忠盛は自身の願いを叶えてもらいたくて、その異類の神を妻とした。
そうしてその神の力を借りる神借りとなり、出世して行った。

その異類の神である忠盛の妻の子供が清盛だ。
表向きは清盛と母を同じくする兄弟はいないという事になっていた。
しかし、実は清盛には妹が居たのだ。
妹の名は蓮月

妹が表向きは存在しないように扱われていたのには理由があった。
それは妹の生まれ方に問題があったからだ。
妹は生まれて来る時に、自分の母親を喰い殺して生まれて来たのだ。

神と呼ばれる力を持つ母を喰らった娘。

だから忠盛は化け物のように娘を恐れ、ずっと閉じ込めておいた。
ただ与えられるものを食べるだけの毎日。
更には忠盛が新しく迎えた妻である池禅尼が、ひどく彼女を嫌っていたのだ。

彼女は清盛のような力を見せる事はなかったが、母を喰らった娘であり、母同様に口がきけない娘だったのだ。
うー、あーと唸るような声を上げるだけの彼女は、閉じ込められたそこでいつも一人だった。

そんな蓮月の日々の中、兄の清盛は光だった。
清盛だけが蓮月をかわいがってくれたのだ。

だから言葉を話せないながらも、蓮月は強く思っていた。
兄の願いを叶えたいと。

そうしてある時戦に赴く清盛が、もっとこの血を持つものがいるといいのだが…と彼女に漏らした。
清盛は平家の天下のために戦いに明け暮れていたのだ。
自分が人並み外れた力を持っていても、一人では限界がある。
子どもたちはまだ幼く、共に戦う事は出来ない。
だからもっと多く同じ力を持つものが欲しいと漏らしてしまったのだ。

それでも「蓮月にはこの力がないのは分かっている。こんな力などない方がいいのだ」と妹を気遣う優しい兄。
そうして戦に赴く兄を見送った蓮月は、兄のために子供を作ろうと決めたのだ。
だから彼女は自身の持つ力を使い、お腹の中に子を設けた。

その後子の安全を考えたのだろうか。
蓮月は閉じ込められているそこを脱走した。
しかし、蓮月の脱走は、すぐに池禅尼に知られてしまい、捜索部隊が作られた。
そうして蓮月はついに見つかってしまったのだ。

既にお腹の中の子供は生まれており、必死で逃げようとした蓮月は、そこで命を落とした。

蓮月の子供を預かった池禅尼は、清盛の血を忌み嫌っていたから、その子供を利用する事にした。
人間を超えた力ならば、同じ力で対抗するしかないと。
だから義朝の妻の常磐御前の息子と共に、その女児を鞍馬寺に預けた。
源氏の末子として、男として育てるようにと伝えて。

平家の流れる異類の力

清盛の血を受け継ぐ息子の知盛は、その才能に恵まれていた。
幼くして、強い力を発揮したのだ。
故に彼は5歳で初陣を果たした。

しかしまだ5歳だ。
力がいくら強いとはいえ、常人を超えた力を制御する事は出来なかった。
だからわけも分からぬまま、無我夢中で戦ったのだ。

そうして気づいたら屍の山が出来ていて、彼は力尽きで倒れてしまった。
次に彼が気づいた時、彼の傍には大切な人の亡骸が。

そう、彼は気づかぬ内に、親よりも自分を可愛がってくれていた人の気を喰らっていたのだ。
無意識だった。
ただ無我夢中で戦って、力尽きていたから。
回復しようと本能がそうさせたのだろう。

それでも彼は自分のその行動を許す事が出来なかった。
沢山の屍と、大切な人の亡骸の傍で思った。
自分は生きていていいのだろうか?と。
こんなに沢山の人を殺してしまった。
大切な人の命も奪ってしまった。
そんな自分は本当に生きていてもいいのか?
と。

幼いながらに自問自答した彼。
以来彼は『生きる事』への執着がなくなった。
ただ流れに身を任せるようになった。
そうしていつか滅びたいと願った。

兄がそんなつらい思いを抱えたまま、戦で忙しくしている頃、妹の徳子と弟の重衡は寂しい思いをしていた。
兄が恋しかったのだ。
それでも彼らには特別な力がある。
だから昼は忙しい兄と共に過ごせなくても、夜になれば兄に会える。
互いに意識を飛ばして、夢の中で遊ぶのだ。

それは清盛の血を受け継ぐ彼らだから出来る事。
自分の体から意識を飛ばし、夢で会う。
そうする事で、忙しい兄とも共に過ごす事が出来た。

しかしある時兄が夜も戻らず寂しくなってしまった二人は、兄抜きで意識を飛ばして遊んでいた。
その時だった。
蓮月が池禅尼の放った追手に命を奪われたのは。

そうして意識だけでさまよっていた蓮月は、徳子の意識と出会った。
すぐに分かった。
空を飛べる意識、それは同じ力を持つものだと。

だから肉体に帰ろうとしている徳子の意識を捕まえて、蓮月は共に徳子の体へ。
徳子のお陰で、言葉を話せず言葉を知らなかった蓮月は、徳子として話をする事が出来るように。
そうして二人は一つの体を二人の意識で共有するようになったのだった。

宿命と向き合い、切り開く

一方同じ血を持つ彼女はと言えば、何も知らぬまま源氏の末子として立派に成長していた。
従兄弟の彼とは、教経との勝負で弁慶捕縛に出た時に出会った。

その日彼女の涙と、五条橋で彼女が発動させたあの力を見た彼。
以来彼女が忘れられなくなってしまった。
その涙を月のように美しいと思ったから。

そうして五条橋での騒ぎが原因で、彼女は鞍馬寺を出て平泉へと向かう事となった。
平家と騒ぎを起こしたのだ、このままでは鞍馬寺が平家に攻められてしまうから。

平家はと言えば、当然彼女を追う事になり、彼女に興味を持った彼もそれに加わった。
そうして彼女を琵琶湖で追い詰めた。
仲間たちは彼女が囮になったお陰で、既に舟に乗っていた。
だから彼は彼女は仲間に見捨てられたと思ったのだ。

私の元へおいで」と彼女に言う彼。
京を出て行こうとしている彼女だったが、どこに行こうと同じだから。
彼女が源氏である限り、どこに居ても平家に追われる。
それが彼女の宿命なのだ。

だから彼は彼女に言った。
どこに逃げても一生源氏の子、それは生涯背負わなければならない。
だから宿命に身を委ねて、私の元へおいで
…と。

それは流れに逆らう事なく身を任せる彼らしい物言い。
彼だったら逃げてもどうせ追われ続けるのなら、捕まってしまえばいい…と思うだろう。
だから彼女にもそれを勧めた。
別に捕虜にしようと思っている訳じゃない。
彼はただ源氏の姫を妻として迎えたいだけなのだ。

けれど彼女はそんな彼の考えを否定する。
嫌だ!」とハッキリと。
それが宿命だというのなら、私は宿命と向き合い、それを切り開いてやる」と。

その言葉に彼は酷く驚いた。
そんな事、彼は一度も考えた事がなかったから。
どんなに忌み嫌おうと、父から受け継いだ力はなくならない。
ただ背負って生きて行くしかないと思っていた。

けれど同じ力を持つ彼女は、同じく源氏の子という宿命を背負う彼女は、切り開くというのだ。
だから彼は彼女にますます興味を抱いた。
それと同時に彼女も意図せず彼に興味を抱くことに。
なぜなら、彼にあの言葉を返した事で、彼女自身、ずっと逃げ続けてきた宿命と向き合う覚悟が定まったからだ。

ただ静かに暮らしたいと思っていた。
源氏の名に縛られず。
けれど周りはそれを許さない。
彼女に期待をかけるのだ。
それを息苦しく思ってもいた。

けれど彼が「宿命からは逃れられない。一生背負って生きていく」と教えてくれた。
だったらその宿命に流されてたまるものか!と。
私は必ず宿命と向き合い、切り開いてやる!と思えたのだ。

女だからと娶られる未来などあってはならない

昔彼ら兄弟で使っていた、異類の力を使い夢で会うという力。
意識を相手の夢に飛ばす事で、その者に会えるのだ。
弟重衡の昔話で、彼はしばらく使っていなかったその力を思い出した。
そうして久しぶりに使ってみる事にしたのだ。
あの日自分から逃れ、舟に飛び乗った彼女を探したくて

だから毎夜彼女に呼びかける。
けれど一向に返事を返されない。
なかなか彼女を見つけられずにいた。
そうしてある日やっと彼女と夢の中で出会う事が叶ったのだ。

やっと見つけた彼女と話をした彼は、彼女の黒髪を撫で、「そなたにの髪には、珊瑚の髪飾りが似合いそうだ。今度贈ってやろう」と話した。
彼の夢に会いに行く力など知らない彼女は、それを最初はただの夢だと思った。
しかし翌日異変が起きたのだ。

奥州藤原氏は、常陸の佐竹氏とは長く友好関係を続けて来た。
所がその佐竹氏が彼女が夢を見た翌日、突然攻めて来たというのだ。
予想外の出来事に、平泉は騒然とした。
そうして彼女は聞いてしまったのだ。
佐竹氏は平家に与する武将なのだ…と。

私のせいだ。
源氏の私が平泉に来てしまったから、友好関係を築いて来た佐竹氏と藤原氏が戦う事になってしまったのだ。

そう思った彼女は、佐竹氏と対峙するため派遣される佐藤兄弟に頼み、佐竹氏に攻められた柵まで同道した。
すると佐竹氏の動きがおかしい事に気づいた。
本当に攻める気があるのか訝しい程、ただちょっかいを出したかのような攻撃なのだ。
更には総大将である佐竹氏はあっさりと彼らに捕縛されたのだ。

そうして総大将は、清盛の息子から渡すように言われたものがある…と、珊瑚の髪飾りを差し出した。
それで彼女は気づいてしまった。
これは知盛の仕業だ…と。
そして昨晩のあれは、夢ではないのかも知れない…と。

その夜、また夢には彼が現れた。
贈り物は気に入ってもらえたかな?」と彼女に尋ねたかったのだ。
そうしてなぜそんな事をするのか?と聞く彼女に、そこに居る限り何度でも兵を送るよ…と返す彼。
どうしても彼女に出て来て欲しいというのだ。

だから彼女は決心した。
兄の元に行こうと。
するとそれに応えるかのように、伊豆から使いがやってきた。
佐々木高綱だ。
彼女の兄清盛の命で、挙兵するから参陣するように…ともの文を届けに来たのだった。

彼女をなんとしても妻としようとする彼。
だから逃げるように平泉に来てしまった。
けれど彼と対峙した時に決めた切り開く行動をついに起こす時が来たのだ。

女だからと娶られる未来などあってはならない。
ならば戦うしかない。

源氏のいち武将として、彼と向き合うと彼女は決めた。
源氏の姫ではなく、源氏の末子の遮那王として、男として向き合うと。

彼が通って来た道

無事頼朝軍と合流した彼女たちは、すぐに戦に参戦することに。
しかも頼朝の腹心の景時から、「弟君に活躍の場を与えてはいかがでしょうか?」と、彼女たちに奇襲部隊としての任を任せようとする。
しかし彼女は彼をよく知っている。
彼が参戦している戦だ、奇襲など読まれているに決まっている。
だから彼女は「奇襲は知盛に読まれていると思います」と作戦自体を否定した。

すると弱腰で奇襲を避けていると思った景時が、ならば自分が奇襲をかけると言い張るのだ。
そうして影時の言い分が頼朝に認められた事で、彼女は影時を援護すべくこっそりと様子を伺うことに。

しかしあんなに警戒したにも関わらず、平家の陣では夜に宴を催していたのだ。
そうして夜半になるといびきをかいて眠る始末。
そんな相手方の様子に呆れた景時は、勝利を確信し奇襲を開始した。

一方彼女たちは訝しんでいた。
彼が居るのにこんなはずはないし、何より不自然すぎると思ったのだ。

そうして彼女の予感は的中。
平家は宴をしていた兵たちを囮に、重衡軍が周りを囲んで、奇襲を待ち構えていたのだ。
反撃にあった景時軍は慌ててしまう。
そこに様子を伺っていた彼女が助けに入ったのだが、更に重衡軍の外側を知盛軍が囲っていたため、彼女たちも彼に追い詰められてしまった。

そうして再び彼と対峙する事になった彼女。
そんな彼女に彼は言うのだ。
私はそなたを傷つけて捕らえたいのだよ」と。
泣いてる顔も美しいが、血に染まる様も美しい…と言う彼。

彼は彼女の性質をよく理解している。
彼女を修羅の道に堕とすべく、力を発動させるには、仲間を狙えばいいのだと。
仲間のためなら、彼女はあの力を発動するはずだと。

彼のよみ通り、仲間を狙い撃ちされ、皆が追い詰められる中、黙ってい見ていられる彼女ではなかった。
仲間を助けたいと言う強い思いが、無意識に彼女にあの力を発動させたのだ。
それからの彼女は、彼の言うように修羅の如き活躍だった。

そうして景時の奇襲部隊が追い詰められている事を知った頼朝軍が駆けつけた時には、彼女のあまりに凄まじい戦いぶりに、仲間である頼朝軍の兵士からも「化け物だ」という声が上がっていた。
化け物呼ばわりされた頃、力尽きそうな彼女の気を失わせた彼。
そうして彼女を連れ去ってしまったのだ。

彼だけが理解できるから。
あの力を持つ者の孤独を、辛さを、悲しみを。
それは彼が通って来た道だったから。

もっと彼女を笑わせたい

彼女をさらった彼は、近くに小屋を見つけ、彼女をそこで休ませた。
力を使いすぎているため、力尽きている彼女に、彼は気を与えた。
訳も分からないまま気を与えられた彼女は、自分の体が楽になった事に驚いた。
そして彼は、彼女の手を取り、気を更に分け与える。
心臓に手を当てる事で、気をより多く吸収できるのだ…と。

初めて貰った気の力に、彼女の本能はもっと欲しいと彼から気を吸い取ってしまう。
彼には彼女と同じ異類の力がある。
だから多少気を奪われたくらいでは、命を落とす事はない。
けれど常人は違う。
幼い頃の彼のように、力を使いすぎた事で、無意識に仲間の気を喰らってしまう事もあるかも知れない。
その時傷つくのは彼女だ。
だから彼は彼女を案じていた。

けれど彼女は気を喰らえる自分に驚いた事と、勝手に連れ去られ、仲間が心配しているだろうという事で、彼の元を去ろうとするのだ。
そんな彼女を案じた彼は、諭すように言うのだ。

別に出て言っても構わないよ。
けれどよく考えてごらん。
今みたいに力を使いすぎて、仲間の気を無意識に喰らってしまったらどうするんだい?
私は大丈夫だが、常人はそうはいかない。
簡単に命を落としてしまうんだよ。
私なら力の使い方も、制御の仕方もそなたに教えてあげられる
…と。

彼の言う事はもっともだった。
確かに自分は何も知らない。
だからしばし逡巡したものの、彼の元に残る事を決意した。

二人が向かう先は京。
彼女がなぜこの力を持っているのか一緒に調べてくれるために。

平家から身を隠すため、彼女は女性の格好をして、なるべく山道を歩きながら二人で旅をする。
道中「平気だ」という彼女をそれでも気遣い「私が疲れてしまったのだよ」とまるで自分のためのように、早めに宿を取ったり。
様々な事を話したり。
気づくと二人の距離は随分と縮まっているようだった。

そうして休む時には、触れ合って休んだ。
最初は無意識に彼に抱きしめられて眠ってしまった事も。
その時にあまりに暖かくて優しい夢を見た事が恥ずかしかった彼女は、翌日からは抱きしめられて寝る事を拒否。
それでも気を整えるためには触れ合うのが一番なのだ…という彼に、渋々手を差し出し、手をつないで休むように。
確かに彼の言うように、手をつないで休むと気が整うのが分かった。

旅の途中、彼は自身の力の事を話してくれた。
元々清盛の母から流れる力である事。
夢に会いに行く事もできる事を。

意外にも楽しい時間を過ごした二人は、琵琶湖へとやってきた。
そこは以前、平泉に立とうとした彼女を彼が追い詰めた場所だった。
そんな二人が今は共に京を目指しているなんて。
とても不思議で、でも共にある事を自然な事のようにも感じた。

琵琶湖を見ながら、彼は重衡な教経を怖がらせた怪談話を彼女に聞かせた。
この話には自信があった。
彼女の出会った夜の泣き顔が美しかったから、この話でまたそれが見られる…と。
そう期待して話をしたのだが、当の彼女はと言えば、その話を聞いて大笑いをするのだ。
これのどこが怖いのだ?全然怖くなどないぞ」と。

そんな彼女の笑顔に、彼の胸は高鳴った。
どうした事だろう?
泣かせたいと思っていたのに。
彼女の笑顔を見たら思ったのだ。
もっと彼女を笑わせたいと。

自分は一体何者なのだろう

琵琶湖から京へと向かう舟の中、船頭が教えてくれた。
今都は清盛公が熱病で倒れて、大騒ぎになっている…と。
危篤なのだと聞いた彼だったが、自分の父の話なのに、まるで他人事のように聞いている。
更には「父に話を聞こうと、六波羅を目指す予定だったのだが、急いだ方がいいね」と。
どこまでも冷静なのだ。

旅の途中の会話からも、彼は平家の栄華にも全く興味がない様子。
そして今こうして父の危篤の噂を聞いても、動じる様子は全くない。
この男は、なにかに夢中になる事があるのだろうか?
彼の様子に、彼女はそんな事を考えていた。

京へ着いた二人は、彼の手引で六波羅の清盛の元へ。
彼が声を掛けても、苦しそうにしている父は、なかなか反応を示さない。
おそらく父に残された時間は、あと僅かなのだろう。
それでも何度か呼びかけていると、父が彼を認識してくれた。

そうして隣に居る彼女を見た清盛は、「蓮月」と彼女に呼びかけたのだ。
どうやら知っている人に似ているようだ。
更には「ずっと心配しておったのだ。蓮月、平家を頼む」とまで。
そうしてこの世に二人とおらぬ、わしの同胞(はらから)と。

彼女を蓮月だと思い、遺言を残した清盛は、そのまま永久の眠りについた。
すると今度はその部屋に清盛の娘で、彼の妹の徳子が現れた。
最初こそ何者なのだ?と怒っていた徳子だったが、彼女の顔をまじまじと見たと思ったら、突然悲鳴をあげ気を失ってしまったのだ。
清盛だけでない、徳子も彼女を…いや、彼女に似た誰かを知っているのかも知れない。

一体どうなっているのか分からない。
それでも一つだけ確信した事があった。
自分は源氏ではないという事。
平家にゆかりのある者だという事が。

その事実に打ちのめされた彼女。
だってずっと源氏の末子として育てられて来たのだ。
しかも男として。
源氏の未来を背負えるようにと。

そんな自分が平家にゆかりのある者だなんて。
今までの自分はなんだったんだろう?
自分は一体何者なのだろう?
本当の母は誰なのだろう?

押し寄せる不安の中、それでも今までの自分を捨てる事など出来ない彼女は、清盛崩御の騒ぎのどさくさに紛れ、彼の元を去り源氏へと戻った。

そして傷つき絶望している彼女を待っていたのは、頼朝からの義仲討伐の命だった。
源氏の戻るとすんなりと受け入れてくれた頼朝が、彼女に同じ源氏の討伐を命じた。
源氏として生きるしかないと決めたばかりなのに。
その源氏の者を討てというのだ。

だから悩んでしまった彼女だったが、後白河法皇の命ならば、義仲を生きたまま捕らえ、後白河法皇に助命を願えばいいと考えた。
果たしてその策がいいものかは仲間も分からない。
それでも今回の任務に悩んでいた彼女が、納得行く答えにたどり着いた事を喜んでくれ、その作戦で任務に当たる事となった。

義仲討伐の日、すぐに義仲本人と出会えた彼女は、あの力を使い無事に義仲を捕らえた。
けれど力尽きて、その後の事を仲間に託し、そのまま意識を手放してしまったのだ。

眠りについた彼女は、夢の中で彼と会っていた。
そうして彼が気を分けてくれた。
所が彼は、彼女に気を与えると突然苦しそうにうめいたのだ。
その声に目を開けると、彼女の傍には幼馴染の春玄が倒れていた。

心の叫び

彼の言った通りだった。
力尽きた彼女は、無意識に気を求め、傍に来た仲間の気を喰らってしまったのだ。
一瞬命を奪ったのでは?と驚いた彼女。
けれど幸いにも春玄は無事で、翌日も少しだるい…とは言っていたものの、何事もないように過ごしていた。
けれど彼女は複雑な思いを抱えることになった。
仲間を殺しかけた自分の恐ろしさを知ったから。

更に悪い事に、命を助けたいと願っていた義仲は、その後頼朝に処刑された事が知らされた。
仲間たちは何度も嘆願してくれたようだったが、受け入れてもらえなかった。
なぜ同じ源氏で殺し合わねばならないのだ?
モヤモヤとした気持ちが彼女の中でくすぶった。

そして同時に、戦う事を怖いと感じ始めた。
またあの力を発動し、その後仲間の命を喰らうのではないか?と、不安でいっぱいになったから。
今回は無事だった、でもいつか私は仲間を殺してしまうかも知れない…と。

それでも彼女には源氏しかなかった。
だからあの力を使う事になったとしても、戦う事を決意。
そうして一ノ谷の戦いを迎えた。

彼女は搦手軍をまかされ、悪路を通って大手軍と同時に平家の陣を攻めなければならない。
そうとは理解していても、実際の悪路は想像以上。
予定よりも進軍は大幅に遅れている。
崖の下を見ると、そこには平家の陣が見えている。
ここから降りられればすぐなのに…と悔しい思いで見つめる彼女たち。

すると平家の陣から声が聞こえた。
どうやら既に頼朝軍は平家とぶつかっているようだ。
だから彼女は鵯越の崖から逆落としをかけたのだ。
あの力を使うことなく、人として駆け下りた。

降りた先には重衡がおり、すぐに戦いが始まった。
同じ力を持つ重衡を倒すため、彼女はあの力に頼るしかなかった。
力のお陰で、無事に重衡を討つ事は叶ったものの、今回もまた暴走。
そのまま頼朝と彼が戦う場所まで、次々と兵を蹴散らし、凄まじい勢いで進んでいった。

当然そんな自軍の武将の姿に、源氏軍の兵士達は恐れおののいた。
化け物だ…」と。

そうして彼の元にたどり着いた彼女だったが、その暴走は一向に止まる様子が見えない。
だから彼は必死に彼女を止めようとする。
けれど彼女を傷つけまいとするあまり、うまく止める事が出来なかった。
それでも諦めず彼女を止めようとする彼は、暴走状態の彼女に腹を刺されてしまった。

彼の腹を刺した時、「姫君」と必死に呼ぶ声が聞こえた気がした彼女は、やっと正気に戻った。
しかし自分の持つ剣は彼の腹を貫いている。
彼が止めてくれようとしていた事は明らかだ。

動揺する彼女だったが、頼朝は彼女が平知盛を討ったと讃え、この調子で次回も役に立て…というのだ。
そうして彼女は、彼女自身の意思など無視され、そのまま源氏の陣営へと連れて行かれそうに。
嫌だ、もう戦いたくない!
彼女は必死に頼朝に伝えるも、聞き入れてもらえない。
もうこれ以上、自分の力のせいで大切な誰かを犠牲にしたくない!
そんな彼女の心の叫びを感じ取った彼は、怪我で動けないはずの体を必死に動かし、「彼女を返してもらおうか」と、頼朝から奪い去った。

何にも執着しない、必死になった事のない彼が、初めて見せた必死な姿。
死にかけた状態で血まみれで、苦しくて汗を流し顔を歪め。
そこには少しの優雅さもない。
いつもの彼からは想像もつかない様子だ。
けれどそれほどにに彼にとって、彼女の存在は大きなものになっていたのだ。

5歳の初陣からずっと…

彼女を連れ去った彼は、自分も怪我をして大変だと言うのに、必死に彼女に気を与えた。
目覚めた彼女は、自分の体が楽な事と、彼の様子が辛そうな事から、彼から気を貰ったことに気づいた。
そんな体でどうして私を助けたんだ?」と怒ったように尋ねる彼女に、「どうしてだろうね?そなたが泣いているのを見たら、耐えられなくなってしまったんだよ」と力なく応える彼。

だから今度は自分が気を与えるという彼女に、「そなたの気は貰わない」と頑なな彼。
それでも少しでもいいから…と彼女は無理やり彼に気を与えた。
そうして口づける事で、彼を少しは自分の気で癒せたと思った。

互いに少し体が楽になった所で、彼は彼女に力の事を話してくれた。
池禅尼の息子であるおじから、父に関する事を聞いたのだ。
祖父の忠盛が神の力を持つものとの異類婚により、神借りとなり出世した事。
そしてその異類婚で生まれたのが父清盛だという事を。

その後力尽きて眠る二人。
彼女は夢の中、5歳の彼と出会う。
そこは戦場で、5歳の彼は屍に囲まれていた。
そんな所に一人でいたら危ないぞ」と彼女は彼に声を掛けた。

すると彼は「いいんだ。私は死んだほうがいいと思うから」と。
何でも沢山の人を殺してしまった上に、親よりも大切にしてくれた親しい人の命も奪ってしまったんだと言う。

彼女も春玄の命を奪いかけた時に、とても恐ろしくなった。
そんな恐ろしさを、彼はこんなにも幼い時に経験していたのだと思うと、胸が苦しくなる。
生きていていいわけがない」という彼の言葉に、彼女は涙をこぼした。

以前「そなたは随分と幸せに育ったのだね」と言われた事があった。
あの時は、母親にも会えず、源氏の末子として育てられた不遇な幼少期。
栄華を極める平家で育った彼の方が、遥かに幸せだろう
…と思っていた。
けれど今ならわかる。
彼は幸せな子供時代を送っていなかったのだと。
彼女と同じように、異類の力を嫌い、その力で奪ってしまったものに、酷く傷ついていたのだ…と。

だから彼女は涙を止める事が出来なかった。
お姉ちゃんは、私のために泣いてくれてるの?」と言う彼は、彼女の涙を見て「お姉ちゃんの涙は、お月さまみたいに綺麗」と言った。
それは大人になった彼も言っていた言葉。
あの日泣いたそなたの涙は月のように美しかった…と。

大人になった彼だけれど、こうして今も心は5歳の初陣の時に捕らわれているのだろう。
あの日からずっと。
その瞬間を幾度となく悔いて生きて来たのだろう。
だから何にも執着しない、自分の命にも、平家の栄華にも。
それは「早く滅ぼされたい」と思いながら、ただ流されて生きているから。

生き抜いて再び彼と…

清盛が永久の眠りについたあの日、彼女の顔を見て気を失った徳子。
あの時娘の顔を見た事で、徳子の中の蓮月が覚醒したのだ。

長い時を二人の魂が同居した状態で生きている。
だからもう分からないのだ。
どこまでが徳子で、どこからが蓮月なのかも。
それでも彼女に会った事で、完全に蓮月は覚醒し、今は徳子は見当たらない。

徳子の中に蓮月がいる事など知らない二人は、そのまま平家へと戻った。
すると蓮月は、異類の力を持つものだけでこの世を支配すると言い出した。
当然そんな事は受け入れられないと言う二人だったが、「私の言う事が聞けないのなら、私の邪魔をするのなら、たとえ甥でも生かしておかない」と、蓮月は手負いの彼を海へと突き落とした。

そして自分の娘である彼女を平家へと連れ帰った。
表向きは人質として、でも実際は娘として悲願達成の道具とするために。

蓮月はずっと清盛の願いを叶えたいと思っていた。
この力で世を治めたいと言っていた兄の言葉を。
だから兄亡き今、自分が中心となり、娘と息子の安徳天皇とで、異類の力の支配する世界を作ろうと考えていた。
逆らう人間どもは全て殺してしまおうと。

一方目の前で彼を海へと突き落とされた彼女は、それでも彼は生きていると信じていた。
蓮月は命を奪ったと思っているが、彼女は信じているのだ。
約束したから。

それは以前彼女が自分が源氏ではないから、居場所がない一人ぼっちだと泣いた時の事。
彼は彼女に「そなたは一人ではない、私が居る。私が決してそなたを一人にはしない」と言ってくれたのだ。
そう、いつだって彼だった。
源氏の宿命に向き合えずにいた彼女を、向き合えるよう導いたのも。
異類の力にの飲まれそうになった彼女を助けたのも。
その力で弱った彼女に気を与え助けてくれたのも。

その癖自分は彼女の気を受け取らない。
あの時だって、無理やり与えたのに、彼は殆ど彼女の気を喰らっていなかったのだ。

思えば彼はいつだって彼女のために動いていた。
ただ流されるままに生きていた彼が、自分意思で動く時、それはいつも彼女のためだったのだ。
そうして彼女は、いつしかそんな彼を慕うようになっていた。
気づくといつも彼のことばかり考えていたのだ。

今だってそう。
彼に会いたいと思う。
そして彼はきっと生きていると思う。
だから蓮月に気を喰われ、動けなくされ、無理やり作戦に参加させられそうになっていても、負けなかった。
彼が生きているなら、自分も生き抜いて再び彼と会うのだ…と思えたから。

助け導く者

一方海へと突き落とされた彼は、手負いではあるものの、なんとか生き延びていた。
打ち上げられた砂浜には、ちょうど源氏の兵士が平家の残党を探していたのだ。

だから彼は、いつもの余裕綽々な様子で源氏の兵に声を掛けた。
捕虜になりたい。頼朝に会わせて貰おうか」と。

当然最初は驚いた兵士達だったが、彼を連行。
その後は彼が自分勝手に頼朝の元までやってきた。
彼が来たことに頼朝もその側近も驚いたが、「捕虜となったのだ」と言われ話を聞いてくれた。

蓮月のやろうとしている事、平家の異類の力の事を話すも、頼朝の側近たちは全く信じない。
それもそうだろう。
自分とてその力を持っているから信じられるが、聞く側であれば信じられるはずなどない。

所が頼朝は違った。
彼の話をちゃんと聞いてくれるのだ。
そう言えば頼朝を活かしたのが、池禅尼だったのだ。

そうして頼朝軍の協力を得て、平家と源氏互いの戦いを超え、あの力から人間を守るために戦う事となった。

壇ノ浦の決戦が開戦した直後から、蓮月は次々と周りの舟の兵士達を喰らった。
そうして徳子の美しい容姿そのままだった蓮月は、魚の化け物のような姿に。
その上力の強さが普通じゃないのだ。
同じ異類の力を持つ彼女や彼が見ても、それは桁違いの強さだ。

だから彼女は考えた。
力で戦っても無理なら、その気を喰らって倒す以外に道はない…と。
幸い娘として彼女に語りかけ、抱きしめたいと腕を広げた蓮月。
だから彼女は抱きついた、「母上」と娘として。
それは決して演技ではなかった。
姿は化け物で、やることもとんでもない蓮月だったが、娘を思う心は本物だったのだ。

そうして母が油断したすきに、彼女はその気を喰らった。
しかし蓮月の気はとても濃いものだった。
自身の母親を喰い殺して生まれて来たのだ。
彼女たちの気とは桁違いなのだろう。

だから母の気を喰らった事で、暴走しそうになる彼女。
でもいつも彼女が気の力に飲まれそうになると、必ず頭の中で彼の声がする。
そして京への旅路の中、いつも繋いでくれた手の温もりを思い出す。
あの手の温もりが、いつも彼女の気を整えてくれた事を。

だから彼のそれを思い出した事で、彼女は自分を保つ事が出来た。
けれど同時に悲しくなってしまった。
どうして本物のお前がここにいないのだ、知盛!と。

いつも彼が助けて導いてくれた。
傍に居る時も居ない時も。
今だってそう、離れていても彼女が暴走するのを止めてくれた。
なのになぜだ?
なぜここに居ない?

すると「姫君!」と本物の彼の声が聞こえた。
彼は源氏の舟に乗り、彼女の元へと向かっている所だ。

生きていた。
約束通り、一人にはしないでくれた。

その事が嬉しくて、彼への強い自分の思いを感じた彼女だった。

地獄まででも連れて行け!

やっと現れた彼に、気を全て喰らって蓮月を止める作戦を話すと、止められてしまった。
蓮月は神と呼ばれた力を持つ母を喰らって生まれた。
故にその気がとても濃いからだ。
だから代わりに彼がその役を担うと言うのだ。

そうして万が一自分が暴走した場合は、殺して欲しいと。
異類の力で暴走してしまったものを止められるのは、同じ異類の力を持つ彼女一人。
辛い役を任せて済まない…という彼。

しかし彼女はいつも彼の期待を裏切る。
今回だって、見事に裏切って見せた。
断る!」と。
一人にしないと約束したのだ。
だったら地獄まででも連れて行け!
と返した。

そんな彼女らしい返答に笑った彼は、だったら共に喰らおうと。
そうして共に平家の業とも言えるこの罪を分かち合ってくれ…と。

彼女だから、彼だから。
共に分かち合う事ができるのだ。
そうして一人では危険な作戦でも、二人ならきっと成し遂げられる。

二人がかりで気を喰らい尽くし、蓮月はついに倒れた。
多くの気を奪われた事で、姿も化け物から徳子のそれとなった。
蓮月の気を喰らったらどうなるのか?
実際二人ともその事は不安だったのだろう。
けれど二人とも体に変化も見られず、無事に蓮月を倒せたのだった。

だから一息ついてホッとしてしまった。
けれど蓮月はまだ力を残していたのだ。
再び立ち上がり、二人を襲おうとした。
するとそこに徳子の息子である幼帝、安徳天皇の声がした。
母上」と。

今徳子の体の中では蓮月が大きく力を削がれていた。
二人が命がけで気を喰らったからだ。
そのお陰で、徳子の意識が戻って来たのだ。
そうして苦しむ中、徳子は兄に頼んだ。
どうか母として死なせて欲しい…と。
息子の未来のために、これ以上の犠牲を出さないために。
そうして傍に居る彼女には、息子を頼みます…と。

辛い役目を負わせてしまってごめんなさいという徳子。
けれど幼子を残して逝かなければならない徳子も、きっと十分に辛いはず。
それでも彼も徳子も未来のために、前に進む事にした。
そうして彼は徳子を殺し、海へとその身を沈めたのだった。

平和の象徴として

平家と源氏の戦いの場であるはずの一ノ谷の合戦は、化け物と平家・源氏の連合軍との戦いとなった。
そうして無事に人間の世界を化け物から守る事が出来たのだった。

その後、平家と源氏の間では、彼と頼朝により和議が結ばれた。
元々後白河法皇は食えない男だ。
このまま平家が討たれ、源氏の一強になる未来を危惧したのだろう。
平家との和議には大賛成だったようだ。
そうして平家と源氏が互いに牽制し合う事で、武士による政治介入の心配がなくなると考えていたようだ。

彼女は無事に一ノ谷の戦いを終えた後、仲間たちを集めた。
そうして自分は実は女で、しかも平家の人間であると告げたのだ。
その告白に部下達は驚いたものの、姫である事に喜んでもいた。

その後彼からは、平家として正式に源氏の姫を妻として迎えたいとの申し出が。
以前平治の乱の際に、彼女の母とされていた常磐御前が清盛に嫁いだ事があった。
あのときには上下関係のある婚姻だった。
しかし今回はそれと全く違う。
互いがこの国の平家のために歩み寄るための婚姻。
二人はその平和の象徴になるのだ。

そうしてその平和の象徴はと言えば、夫のヤキモチにより只今喧嘩中。
源氏の皆に会いに行きたいと言った彼女に、彼は確かに許可を出した。
ずっと一緒だった仲間と離れて過ごすようになり、会えるのを楽しみにしていたのだ。
しかし妻が楽しみにしている様子に、彼の気が変わった…いや、ヤキモチを妬かずには居られなくなってしまった。
だから行ってはならない…と許可を取り下げてしまったのだ。

彼女は彼がヤキモチから約束を翻したとは思わず、横暴だと腹を立てているのだ。
けれど彼が自身の狭量さを彼女に語り、無事に和解。
結局彼女が時折源氏に遊びに行く事を許さなければならないようだ。
だから彼は案じていた。
再び源平の戦いが起こる事を。
私の嫉妬で、再び源平の戦いが怒らないことを祈っておくれ」と。
そんな冗談を言える程に、彼らの世界は平和な世となったのだった。

その他のキャラのネタバレ(あらすじ)

平教経

武蔵坊弁慶

春玄

源頼朝

ifエンド

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