オトメイトさん、REDさんのNintendo Switch用ソフト「ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~」で古川慎さん演じるキャラクター、源頼朝の感想とネタバレをまとめました。
キャラクター紹介
※「ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~」は乙女ゲーム制作ブランド『オトメイト/RED』の作品です。
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CVは古川慎さん。
源義朝の嫡子で遮那王の兄。
平治の乱で父と兄達を亡くした。
彼は清盛の継母の池禅尼の嘆願により、伊豆に流刑となり命は救われる。
源氏再興への思いが強いからか、弟の事も源氏再興の道具のように見ている所が。
どこか冷酷で冷たく見える彼には背負うものが。
父や兄達の死、池禅尼の嘆願、そこに隠れた秘密とは一体………。
感想
頼朝の感想をいくつかの項目に分けてまとめました。
ビジュアルについて
イケメンです。
大変美しくも冷酷な表情も、なかなか素敵でした。
基本暖色な髪色が好きですが、彼の冷酷な雰囲気に寒色系の髪色は合っているので、それはそれで良かったなって思います。
性格について
最初は冷たい印象しかありませんでした。
途中から彼女に対してはそうでもないのかな?と見えたり、それでも戦に関する考え方は彼女が絡んでも冷酷に見えたり。
なかなかつかめない人でした。
人に心を見せないタイプなようですが、プレイしている私にも、なかなかその心が見えなくて。
だからこそ、彼の本当の想いを知りたいと思えたのかな?と思います。
最終的には性格も大変好みでした。
素敵な人です。
恋人として
ぜひ恋人になりたい人です。
孤独感が半端ないので、傍で支えてあげたいなって思う人でした。
いつも傍で「ひとりじゃないよ、私がいるよ」と言ってあげたくなる感じ。
強いし冷酷に見える人なのに、危うい感じもあって。
傍で見ていないと心配って思う人には、昔から大変弱いです(笑)
なのでずっと傍でお支え出来たらいいな…と思えました。
仲間として
仲間と言う距離感では、なかなか彼の本心は見えにくくあるかな?とは思います。
それでも彼の考えを知った今は、仲間というか部下として、彼の目指す世の中を作るお手伝いが出来たらいいのにと思います。
共に戦う、背中を預けるというよりは、仕官したくなるタイプですね。
ポジション的に総大将で、源氏の棟梁なので、そこは仕方ないかな?と思います。
最後に…
春玄の後の攻略となりましたが、春玄シナリオで傷ついた心を癒やしてくれました。
いや、頼朝さん自身はそんな癒やし系ではありません(笑)
内容的に、春玄で分かった事はここでも出てくるのですが、その事実に対する彼の対応や態度がすごく嬉しかったです。
なんていうんでしょうね。
居場所を守ってもらえたと言うか。
そして春玄のシナリオでは分からなかった事実も出て来ました。
池禅尼がなぜ彼を救うよう嘆願したのかも。
そういう事実が重くもあり、でも同じに生命を掛けて重いものを背負っている彼だからこそ、互いに支え合えるのかな?とも思えました。
ネタバレ(あらすじ)
妹でなくとも、人でなくとも。
私とお前の間に、この珠玉の如き繋がりがある事に、何ら変わりはない。
父と兄を喰らった命
それはまだ彼が14歳の頃の事。
平治の乱で源氏が平家に破れた。
都から父と兄と必死に逃げる中、追手を食い止めるため、兄たちが足止めをしてくれたのだ。
父上と共に逃げろ!と。
その後兄たちと合流出来たものの、兄の一人が足止めの際に重傷を負っていた。
逃亡中の彼らに、ゆっくりと傷を癒やす時間などない。
そして兄の傷はどう考えても逃げることは不可能だった。
ここに兄を捨て置けば、平家に見つかり首を晒されてしまう。
同じ一族として、家族として、そんな屈辱を与える事は出来なかった。
だから父が彼に命じたのだ。
兄を楽にしてやれと。
そう、それはつまり兄の命を彼の手でここで断てという命令。
実の兄を手にかけるなんて。
14歳の彼には重すぎる命令だった。
「お前がやらなければ、兄の首は平家に晒され辱めを受ける」と言われれば、武家で育った彼も納得しない訳には行かない。
だから彼は必死の思いで、兄の命を断った。
そうして兄と父とまた逃げるも、追手の数が多すぎて、彼らは追い詰められてしまった。
そこでまた父は彼に命じたのだ。
もう一人の兄と自分の命を、お前の手でここで断て…と。
先程も必死の思いで兄の命をこの手で奪ったばかり。
なのに父上と兄上の命も断つなんて…。
辛すぎる指示に心が折れそうになるも、「お前は生きろ。我らの命を背負って」と命を思いをつなぐ事を託されてしまった。
幸い彼はまだ14歳。
敵方に捕まったとしても、一番生き残る可能性は高いのだ。
だからこそ、父や兄や一族の無念を背負い生きろと命じられた。
そしていつかその無念を晴らすために。
そんな父の思いを無理やり理解した彼は、泣き叫びながら父と兄を手に掛けた。
その後捕らえられた彼だったが、父の予想通り生かされる事に。
何故か敵の総大将である平清盛の継母の池禅尼が、彼の助命を嘆願してくれたのだ。
そして池禅尼は、彼に託した。
清盛には汚れた血が流れているから、その血を根絶やしにして欲しい…と。
そのために敵であるそなたを助けるのだと。
異類の血は異類の血で絶やす。
いずれそなたの元に、そなたの力となる者が、源氏の末子として現れるであろう…と。
その時は理解出来なかったそれを、後に弟が彼に参陣した際に理解する事になるなんて、その時の彼はまだ知る由もなかった。
出生の秘密
平家を倒すため、彼は挙兵したが、平家の勢力とその数に危険な状態に陥った。
まだ彼の軍には他からの援軍はない。
もうだめかも知れないという状況で現れたのが、彼の弟のだった。
平泉で平家の話を聞き、兄が平家を倒すために挙兵するだろう…と思い馳せ参じたのだという。
そうして弟とその仲間の活躍により、九死に一生を得た彼。
その後弟と共に行動しながらも、池禅尼の言葉が気になっていた。
平家に流れる異類の血。
その力を倒すには、異類の力が必要。
いずれ源氏の末子として、異類の力を持つものが現れ、そなたの助けとなるだろう…と。
池禅尼の言葉が真実であるならば、今目の前にいるこの弟が、異類の力を持つものということになる。
異類の力とは、どのようなものなのか?
気になった彼は、その後の戦でも総大将自ら彼女たちと共に出陣。
そうして異類の力を目の当たりにしたのだ。
人間業とは思えない速さと強さで、敵を切り倒していく彼女の力を。
故に気づいてしまったのだ。
彼女とは血縁関係にないということに。
平家に流れる力と同じ力を持っているから。
更には彼女が毒矢に倒れ、その治療をしようと服を脱がせた時、もう一つの真実を知る事に。
それは弟が妹だったという事。
だから彼は彼女の母であるとされる常磐御前を探し、話を聞いた。
一体あの者は何者なのだ?と。
すると常磐御前も詳しい事は分からないというのだ。
ただ自分が清盛の妾となる時、池禅尼が現れて、息子を助けてくれると言われた。
そうしてどこからか連れて来た女児を源氏の末子とする事。
自分の息子は重成の息子として、その女児と共に鞍馬寺に預ける事。
そして鞍馬寺で源氏の末子として、男として育ててもらうよう頼む事を指示された。
それ以上の事は何も知らないという常磐御前。
更に、彼の弟を偽りで入れ替えていた事を侘びた常磐御前は、本当の弟の事を彼に伝えようとした。
しかし彼は「断る。興味はない」と返したのだ。
既に弟である彼女とは心を通わせてしまった。
だから彼女が何者かが知りたかっただけで、彼女が弟でないなら、誰が弟でも構わなかったのだろう。
珠玉の如き繋がり
出会ったばかりの頃、彼女にとって兄はとても怖い存在だった。
唯一の肉親と会えると楽しみにしていたのに、兄にとってはそうでもないように感じたのだ。
彼女を見る目も、肉親に向けるそれとは思えない程、冷酷に思えたから。
それでも総大将でありながら、無茶をしたり、彼女たち共に危険な任務についたりする兄だったので、怖いながらも意見した事があったのだ。
源氏を背負って立つ方ですから、無茶な戦い方はお控えくださいと。
私も全力で守りますが、ご自身でもお気をつけくださいと。
そんな彼女に「お前が全力で私を守るのであろう?ならば問題ない」と返す兄。
そんなやり取りを経て、次第に彼女の中で兄の印象は変わってきた。
いつしか怖いという思いよりも、兄として慕う気持ちが先に来てしまうほどに。
傍にいたい、話がしたい。
恋しいその気持は、今まで知らなかった肉親の情なのだろう…と。
彼もまた同じように肉親の情を感じるようになっていた。
しかし彼女は肉親ではない。
おそらく平家の血を引くものだろう。
にも関わらず、情を感じる理由を考えていた。
自分には一片の私(し)もあってはならないと考えていた彼。
なぜなら自分はこの手で父を、兄を殺したから。
そうして源氏を一人背負った身だから。
そして源氏の再興を考える中、荒れた世を見た彼は考えたのだ。
平家を倒したその先の未来の事も。
今のままの古い体制では、きっと同じ事が繰り返される。
世の中は新しくなるべき時なのだと。
そのため、彼は平家を倒すだけでななく、今の古い体制までも壊してしまう事を考えていたのだ。
そしてそれが彼の天命。
命をとして果たすべき天命。
だから自分はその天命を果たすための道具に過ぎない。
そう考えるが故に、彼は景時に最近弟と近づき過ぎでは?と言われた時も「あれは道具に過ぎぬ」と応えたのだ。
以前弟が伊豆を尋ねた時に、私の天命と共にある…と彼女に言った事があったのだ。
源氏とし馳せ参じとくれるのならば、共に天命の道具となり、命をとしてそれを果たしたいと考えていたからだ。
けれどそんな事を知らない彼女は、偶然景時と彼の会話を聞き、傷ついてしまった。
二人の間には珠玉のような繋がりを感じていたから。
けれど彼は自分を道具だと言った。
つまりはそれは自分だけが感じていた感情だと思ったのだ。
駆け出した彼女に気づいた彼は、景時の制止も聞かず彼女を追いかけた。
そうして彼女に天命の話を聞かせたのだ。
一片の私も持ってはならない、なのにお前といると私も繋がりを感じてしまって戸惑うのだ…と。
もう既に女である事も、妹ではない事も知っている。
それでも感じる繋がり。
肉親の情でないのならば、この珠玉の如き繋がりの正体はきっと………。
平家の同胞(はらから)
一ノ谷の戦で、彼と彼女は別ルートから進軍することに。
彼女が任された搦手軍は大変な悪路。
しかし本隊が正面から一ノ谷を攻めると同時に、搦手軍も背後から平家を挟み撃ちにしなければならない。
お前にかかっているぞ…と彼からも信頼を託されていた。
そうして鵯越に差し掛かると、崖下には平家の陣が。
目と鼻の先にあるのに、断崖で降りられず、悪路を迂回するより他はない。
更には崖下からは、頼朝軍が平家と戦う声まで聞こえて来た。
数で優っている平家と対等に戦うには、彼女の搦手軍が一刻も早く背後から攻めなければならない。
事態は一刻の猶予もない。
どうするか考えた彼女は、あの力を使うことにした。
池禅尼が『異類の力』と呼んだあの力だ。
力を発動していれば、馬で崖を駆け下りる事も出来るはず。
だから彼女は単騎で崖を駆け下りると宣言し、力を発動して一気に駆け下りた。
すると彼女の仲間の佐藤兄弟や弁慶、春玄も後に続いた。
彼女の思い切った行動に、平家軍は混乱。
しかし彼女の前には重衡が立ちはだかった。
重衡も同じ力を発動、共に全力で戦う中、力を一切制御していない…いや、制御する術を知らない彼女の力が勝り、重衡を撃破。
その勢いのままに大勢の敵を薙ぎ倒し、彼の元へとたどり着いた。
たどり着いたそこには重衡の兄の知盛が。
彼女の活躍に、知盛は確信した。
彼女は自分たちの同胞であると。
弟の重衡を倒した事が何よりの証拠だ。
そうして勢いのままやってきた彼女と戦った知盛は、消耗した力を回復するために、源氏の兵士を捕らえ、その気を喰らった。
すると知盛に気を喰らわれた兵士は、精気を吸い取られ干からびてしまった。
そんな異様な光景に、皆驚き化け物だと騒ぎ出す。
その混乱の中知盛は「この者は平家の同胞。必ず迎えに参る。しばし預ける故、丁重にもてなすように」と声高らかに宣言し、逃げて行った。
戦の結果は源氏の圧勝。
もちろん彼女の活躍のお陰だ。
けれどいつもの勝利の賑わいはない。
皆恐れているのだ。
源氏の大将の弟が平家と同じ化け物だ…と。
お前が何者であろうとも
一ノ谷の戦の後、彼女はしばらく寝込んでしまった。
力の使いすぎが原因であるが、それだけではないだろう。
精神的にも参ってしまったのだ。
あの日、知盛が兵士の気を喰らうのを見て、同じじゃないと否定した彼女。
しかし、重衡との戦いで消耗した彼女に、知盛は自らの気を与えたのだ。
それは決して親切からの行為ではなく、彼女を絶望させるためのもの。
同じじゃないと否定する彼女に、そなたも私と同じ気を喰らう化け物なのだよ…と教えたかったのだろう。
その後、知盛は彼にも「お前の気でも与えてやるといい」と言い残していたのだ。
彼は知盛の言葉そのままに、彼女を早く回復させたくて、無理やり唇を奪い、自らの気を吸わせた。
彼の気を分けられたことで、彼女は確かに楽になったのだが、心は苦しくなってしまう。
大切な人の気を喰らって生きるなんて…と思ったから。
だから彼女は「私はあなたの妹でもなければ、源氏でもなく、人ですらないのですよ?」と。
そんな自分の存在をおぞましいと思ったのだ。
しかし彼は同じだと言う。
父や兄の命を喰らって生きている自分と、お前になんの違いがあるのだ?と。
そうして「お前が何者でも構わない。それでも俺はお前が愛おしいのだ」と。
血の繋がりもないのに、珠玉の如き繋がりを感じるこの感情はなんなのだろう?とずっと考えていた。
そしてやっと見つけたのだ。
家族の情ではなく、愛情なのだと。
この日を境に、二人はより確かな絆で結ばれた。
彼女も妹でも源氏でもなくとも、彼の目指す未来を共に切り拓きたいとの思いは変わらなかった。
だからこれからも彼のために尽力する事を誓った。
そうして軍を移動させる事となったのだが、彼女の仲間たちが兵士達の士気の低下や、彼女に関する噂を知っていた。
だから本隊から離れ、遅れて進軍する事で、兵士たちの噂や好奇の目から彼女を守っていたのだ。
けれど何も事情を知らない彼女は、「どうしてこんなに本隊から離れているのだ?」と疑問を口にする。
「殿はまだ倒れたばかりです。休養が必要だから、少しゆっくり進む事にしたのです」と。
その返答に僅かな違和感を感じつつも、気遣ってくれる気持ちは素直に嬉しかった。
そうしていつかは知ることになるとしても、少しでもその時間は伸ばされたはずだったのに。
彼女の姿が見えない事を案じた彼の使いとして、景時が現れた。
彼が呼んでいると言われ、景時に従い彼の元へ。
するとその道中、兵士たちのそばを通ると、皆が彼女を見てヒソヒソと話す。
平家と同じ化け物だから、気をつけないとを殺されてしまうと。
そして皆が彼女を怯えたような目で見るのだ。
そんな兵士の様子に景時は言った。
このままでは頼朝様の評判に関わりますと。
平家のように、人心が離れてしまうのが一番怖いと。
なのにあなたがあの方の側にいる事で、あの方の立場が危うくなる。
傍に居るべきではない…と。
何者でも構わないと、愛おしいと言ってくれた彼。
父と兄を自らの手で殺め、孤独を生きて来た彼。
だから約束したのだ。
ずっと傍に居ます、あなたを一人にしません…と。
けれどそれは許されない事だったのだ。
平家の血を引く化け物の自分には。
大切だから傍にいられない
景時の話を受けて、彼女は彼に謁見した後、一人鞍馬寺へと身を潜めた。
彼が大切だったから。
確かに兵士達は怯えていた。
自分だって自分の力が恐ろしい。
あんな風に人の気を喰らって命を奪える力など、人間のものではない。
そんな力を知られてしまった以上、その自分が彼の傍に居る事は叶わない。
あの人には命を賭してつくりたい未来があるのだから。
そう考えた彼女は、春玄ら仲間にも何も告げづに、一人姿を消したのだ。
鞍馬寺に身を潜める前に、彼女は彼の呼び出しに応じ、謁見していた。
その時に壇ノ浦での戦では必ず役に立ちますから、兄上の道具としてお使いください…と伝えていた。
そして知盛を倒す力になります…とも。
けれどその様子がおかしかった。
もう互いに大切な者であると伝えあった仲だ。
ずっと傍に居てくれる約束もしていた。
なのに謁見の時の彼女は、「源氏の御曹司」のようだったのだ。
もう彼は正体を知っているし、女である事も知っている。
にも関わらず、まるでそこに壁があるかのように、職務に忠実な配下の者の姿勢だったのだ。
だから彼女の様子が気になった。
なにかあるのでは?と案じていた。
そうしてそれは現実となった。
あの謁見の後、彼女は仲間たちの元に戻る事もないまま、姿を消してしまったから。
彼女の部下たちも、もちろん探してくれていた。
更には捜索の範囲を広げられるよう、彼も部下を手配していた。
そして彼自身も彼女を探していた。
彼には一つ宛があったのだ。
それは以前彼女が自分のために毒矢を受けた鞍馬の山だ。
幼い頃、寂しくて母上恋しくて、よく木に登り都を眺めたりしていた…と彼女が以前話してくれたから。
そして実際に悲しい時に一人でそこを訪れている彼女を、見つけた事もあったから。
けれど鞍馬山にも彼女の姿はなく、鞍馬寺に尋ねても来ていないとの事だった。
その頃、そんな彼の様子を彼女は隠れて見ていた。
自分を探してくれている。
その様子だけで彼の想いを感じ嬉しい気持ちになった。
もちろん会いたかった。
傍に居たかった。
鞍馬山で自分を探すあの彼の目を彼女は知っていた。
それは以前彼が14歳の頃家族と逃げたあの道で彼が見せた、迷子のような悲しげな顔と同じだったから。
その時はなぜあんな顔をするのか?と思ったが、家族との経緯を聞き、その表情の意味を理解したのだった。
そして今日も、あの日のあの顔を見せていたのだ。
大切な人を失くし、必死に探そうとするあの顔を。
冷酷な人などではない。
ただ自らを天命のための道具と考え、一片の私も持たぬよう律していただけ。
本人の心はあんなにも誰かを求めているのだ。
それを知っているから辛かった。
でも知っているから傍に居られない。
彼に寄せられる人心を失わせる訳にはいかないから。
そうして彼も仲間達も彼女を見つけられないまま、壇ノ浦の軍議の日を迎えた。
仲間たちは彼女を案じていたが、彼は信じていたのだ。
壇ノ浦で自分を使って欲しいと言った彼女だから、きっと当日には姿を表すはずだと。
そうして始まった軍議。
そこでは潮の流れの問題が取り上げられた。
午前中は潮の流れが平家方に有利なのだ。
しかも相手は海の戦いに慣れているのに対し、こちらは海の戦いでは素人同然だった。
そこで昼に潮の流れが変わるまで、持ちこたえるという案が出された。
しかしそこまでどう持ちこたえるのか?が課題となった時、彼女が軍議に姿を現した。
そうして自分があの力で知盛と戦い、昼まで時間をかせぐと言うのだ。
自分のあの力であれば、舟から舟へと飛び移り、知盛の所までたどり着けるというのだ。
しかも今まで暴走状態で使っていた力だが、鍛錬を積み今では自在に操れると言う。
そうして彼女の案が採用され、軍議は終了したのだった。
必ず生きて見(まみ)えよう
軍議に現れた彼女を彼は呼び出した。
話をしたかったのだ。
今まで見つけられなかったから。
何より、軍議の彼女の様子から、彼は彼女の覚悟を察してしまったから。
きっと彼女は知盛と刺し違えようと考えているのだと。
案の定、彼女は決心していた。
壇ノ浦で知盛を道連れに散る事を。
彼の作る未来に、自分と言う化け物は不要だと考えたから。
何より知盛の持つあの力を、あの血を根絶やしにするのなら、自分も一緒に消えるのが一番だと思ったから。
けれどそんな彼女の心を見透かした彼は、彼女の未練になりたいと伝えた。
私のために生き残れと。
私ではお前の未練になれぬのか?と。
お前は私に忠誠心を捧げた。
ならばその身も捧げよ。
命を粗末にせず、必ず生きて私の元へ戻れ。
彼のその言葉に、彼女は涙した。
自分のような化け物でも、あなたの元に戻っていいのだ…と。
そう思わせてくれた事が嬉しくて。
そうして彼は彼女に策を授けた。
知盛とまともにやり合うのではなく、とにかく逃げ回れと。
彼女の任務は昼まで持ちこたえる事。
だから舟から舟へと飛び移り逃げればいい。
幸い知盛は彼女を追いかける事を楽しんでいる様子だったから。
壇ノ浦の戦いの当日、彼女は彼の策の通り、知盛と対峙した後、舟から舟へと飛び移り時間を稼いだ。
そうして太陽が真上に来た時、彼の舟から知盛に矢を射たのだ。
その矢には以前彼女が侵された附子の毒が塗られていた。
彼女の体に影響を与えた毒なら、知盛にも影響を及ぼすのでは?と考えたのだ。
ただ力を発動している時には、どうでるかは賭けだった。
けれど見事に毒は威力を発揮し、知盛は片膝をつくことに。
これで源氏の勝利だ…と思った矢先、潮流が変わった事で知盛軍の舟もこちらへと向かって来た。
そして知盛の援軍として参加する様子なのだ。
それを見た彼は、すぐさま自軍の舟も彼女の元へと向かうよう号令をかける。
しかし誰も動かない。
あの化け物はいっそ平家と共に滅ぼされるべきでは?と言う、恐ろしい考えを持っていたから。
けれどそんな自軍の兵に彼は声をあげた。
今までの戦を思い出してみるのだ。
あの者が一体どれほどのものを守ったのか、お前たちはずっと見て来たであろう!と。
その言葉に最初こそ動けずじっとしていた兵士達だったが、平家の援軍が彼女と知盛の舟に近づく頃、一斉に弓矢が放たれ、平家の援軍は舟へたどり着けなくなった。
皆思い出したのだ。
自分が、仲間が彼女に助けられた事を。
そして京に住む人々を彼女が守った事を。
彼の言葉に感化された兵士達の活躍により、源氏はこの壇ノ浦で見事平家を討ち果たした。
本当の家族に
平家に勝利した源氏は、法皇の命により三種の神器を回収。
しか3つの内の1つである剣は、安徳天皇の母である徳子が、息子と共にその剣を抱えて海へ身投げした事により、回収が叶わなかった。
それでも2つを回収した事、平家を討ち果たした事は、法皇にも評価された。
そして法皇に報告を兼ねた謁見をした際、以前彼が京に入った時に「貴族の娘との縁談を…」との話が出ていたのだが、それが再燃してしまった。
平家を討った今、落ち着く頃だろうからと、貴族の娘を紹介する気満々の法皇だったが、彼はその話を丁重に断ったのだ。
その話が出た際に、彼女に嫌なのだ…と言われたのを思い出しながら。
一方彼女はと言えば、知盛との長時間に渡る戦いで負った傷を癒やしていた。
しかも姫の格好でだ。
順調に回復はしているものの、どうも格好が気になってしまうんだとか。
それも仕方ない。
彼女はずっと男として生きてきたのだから。
そんな彼女は、自分が平家の血を引く者で実は女だと言う事を、壇ノ浦の後仲間たちの告白した。
当然非難されると覚悟しての告白だったが、意外にも皆すんなり受け入れてくれたのだ。
更には「ではこれからは殿じゃなく姫だな」と言い出した仲間達は、むしろこれはこれでいい!と大喜びしているくらいだ。
だから療養中の今も、代わる代わる自分たちの姫の様子を見に来てくれているようだ。
彼が謁見している最中も、仲間が遊びに来てくれたのだという。
一片の私も持たぬと心に決めていた彼。
けれど彼女と出会い愛した事で、その決意は変わってしまった。
私を持ちならがも、目指す未来を実現させるのだ…と。
だから少し面白くない。
仲間たちが自分の留守に彼女を尋ねていた事が。
何より彼女の部下達は、彼女に対して気安い事も腹立たしかった。
…そう、全ては嫉妬だ。
彼女を愛していると気づいて以来、そんな気持ちに襲われるのだ。
出会ったばかりは冷酷な表情しか見せなかった彼が、今では嫉妬の顔も見せてくれる。
それが彼女にはとても嬉しい事だった。
だから思ったのだ。
これからももっといろんな顔がみたいと。
互いに孤独の中に生きて来た二人。
一度は肉親だと思い、絆を感じた事もあった。
しかし二人は他人で、そのことに傷ついた事もあった。
けれどもうその必要はない。
「私の妻となり、本物の家族になろう」
彼が彼女にそう告げたから。
以前妹よりも妻の方が繋がりがずっと強い…と兄の縁談に嫉妬した彼女。
けれど今はその妻に自分がなることになったのだ。
妹でない事を悲しく思った事もあったが、今度は妻となり、ずっと彼の傍に居る事が出来る。
孤独だった彼を、これでもうひとりにしなくて済むのだ。
一片の私も持たぬ。
そう決めていた彼が初めて手にした私の部分。
それが彼女なのだろう。
きっとこれからは妻となった彼女に支えられ、天命である平和な世を築いて行く事だろう。
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平教経
武蔵坊弁慶
春玄
平知盛
ifエンド
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