キャラクター紹介
CVは石田彰さん。
生まれは大正時代で一番の年上のはずだが、学園では一番の古株ではない。
絵が好きで、よく絵を描いているものの、規制で色彩を奪われているのか、彼の絵は真っ黒に塗りつぶされていて、誰もその絵を理解出来ない。
学校からカワッタ子と呼ばれる彼は、バッドアップルズに所属してはいないが、イイ子でもない。
一歩引いたところから、みんなを見ているような人。
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感想
すごく良かったです。
ちょっとアニメな雰囲気と、マットで鮮やかな色使いがどうかな?って思いましたが、凄く感動しました。
地の文章かなく、セリフと主人公の心の声だけで進む仕様の作品って、実は結構物語に入り込めなくて苦手でした。
けれどこの作品は、凄く感動させてくれて。
内容がしっかりしていれば、入り込めると教えてくれた作品でした。
シキシマさんに関しては、ファンタジーな感じもあり、泣けましたね!
時代の事とか、病気の事とか、どう乗り越えるの?と思いましたが、凄く素敵な方法で解決してくれて、それが非常に好みで泣けました。
一見希望なんて見えない生還なのに、たったひとつの望みの為に、あんなにも強くある事の出来たシキシマさんは、本当にカッコよかったです。
後、シキシマさんからやや離れてしまいますが、文化祭の時のサンちゃんの歌、凄い良かったです。
心が震えました。
ネタバレ
僕はあの絵を見つけるまでは、自分がなんのために生まれたのか知らなかった。
あの絵は僕になすべきことを教えてくれた。
そして君に巡り合わせてくれた。
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幼い頃、彼には世界の全てが美しく見えていた。
けれど彼の綺麗は誰にも理解されなかった。
そうして扱いに困ったのか、彼は絵を描いている叔父の家に預けられた。
来る日も来る日も絵を描いていた叔父とは、まともに会話が成り立たなかった。
それでも、叔父をそこまで夢中にさせる絵に興味を抱いた。
そんなある日叔父に連れられヒマワリ畑へ。
そこは本当に綺麗で、綺麗だと喜ぶ彼に「気に入ったか?」と問う叔父と、初めて会話が噛み合った気がした。
それから程なくして、叔父は亡くなった。
絵を描いている途中に、座ったまま、うつむき血を吐いて。
以来、彼は取り憑かれたように絵を書くようになった。
けれど彼の絵は誰にも理解されなかった。
それでも叔父のように絵を描き続けたある日、彼は咳き込んで血を吐いた。
そう、叔父と同じ病を患ってしまったのだ。
そうして彼も死を迎えようとしていた。
でも悔いはない。
絵も沢山描いた。
誰にも理解されなかったけれど、それで満足だった。
今も描きかけている絵があるが、筆を落とし、それを取る力すら残っていない。
満足げに目を閉じた時、彼は思った。
そんなの嘘だ!と。
全部自分に言い聞かせてただけ。
叶わないものを望んでも辛いから。
太陽に手を伸ばしても決して届かないから。
だからこれでいいと、これで十分だと。
でも本当はそうじゃない。
気持ちを言葉で伝えられない彼には絵しかなかったから。
だから本当は誰かに何かを伝えたかった。
絵を通じて心を届けたかった。
けれどもう力など残っていない。
でも思うのだ「死にたくない」と。
「生きていたい」と。
そんな彼の未練が、NEVAEH学園へと彼を導いたのかもしれない。
そうして彼はカワッタ子になった。
学校の寮で暮らすし、ワルイ子のチームにも所属していない。
けれど絵ばかりを描いていて、授業には参加しない。
そんなに好きな絵なのに、彼の絵はここでは真っ黒になってしまう。
だから誰にも何も伝わらない。
そしてそれが規制と呼ばれていた。
何らかの力が働き、みんな何かを奪われていた。
この学園には、沢山の校則があった。
ワルイ子たちはその校則を破る活動をしていた。
中でも7つどうしても破れない校則があり、それを破る為に。
7つの破れない校則のひとつに、「禁断の果実を食べちゃ、ダメ」と言うものがある。
食べると退学になると言う果実。
卒業が自分を失くしてやり直しする事ならば、退学は生還を意味する…と考えた彼らは、いつか禁断の果実を食べる為に頑張っていた。
けれど禁断の果実に関しては、その場所すら分からなくて。
見ることも出来ないものだった。
それに7つの破れない校則には、彼の絵に色彩が無いように、なんらかの規制がかかって破れないようだった。
例えば校則には「愛を伝えちゃ、ダメ」とあるが、それも愛の言葉を紡ぐと、そこにノイズが入り相手に伝えることが出来ないのだ。
そんな学園にあたらに入学してきたのが彼女だった。
そしてワルイ子のバッドアップルズに入った彼女は、彼によく懐いていた。
そんな彼女が彼に風を吹かせた。
今まではバッドアップルズの活動を見守るだけだった彼が、自ら活動に参加するようになったのだ。
更には彼女は規制がかかりにくいのか、「テストで100点取っちゃ、ダメ」の校則を破ったり、「新入生歓迎のゲームで勝っちゃ、ダメ」の校則を破ったのだ。
そしてその度に果実が現れ、けれど手に取ろうとすると、消えてしまった。
そうしてみんなで力を入れた文化祭で、バッドアップルズの一員のサンズが、規制を外し見事歌えなかった新曲を歌う事に成功。
その新曲には、サンズの愛がこもっていて、聞いたみんなに愛が降り注ぎ、「愛を伝えちゃ、ダメ」の校則を破る事に成功。
しかし、その時に現れた果実を手に取ったサンズは、もう一つの形の卒業を果たしてしまった。
そう、突然消えてしまったのだ。
彼らが目指しているのは生還出来る可能性のある退学で、そんな隠された卒業など目指してはいなかった。
だからバッドアップルズは活動を見合わせた。
どんな形で卒業してしまうか分からないから。
みなが一様に落ち込む中、彼だけは違っていた。
サンズの愛を伝える行為に感動し、「僕もあんな風に消えたい」と、必死に絵を描き始めたのだ。
以前とは違う様子の彼に、彼女は不安になり何度も彼を訪ねた。
最初こそ、絵を描く彼に邪魔にされたりもしたが、次第に彼女の言葉に耳を傾けてくれるようになり、以前の彼に戻れたのだ。
そして彼女のお陰で彼は思い出した。
死ぬ間際に死にたく無いと、書きかけの絵を残してこの世を去りたく無いと思っていた事を。
ずっと満足してあの世界を去った…と思い込んでいた彼だったが、きっとその未練が、絵を描き終えたいと言う願いが、彼の絵から色彩を奪い、何の絵か分からないものになると言う規制を生んでいたのかも知れない。
だから彼女は言うのだ。
頑張って禁断の果実を見つけるから、それを食べて絵を描きあげてほしいと。
けれど彼は不治の病。
あの当時死病といわれていた病により亡くなっている。
だから仮に戻れたとしても、彼はすぐに死んでしまう運命だった。
それでも彼女に出会い、彼女に惹かれた彼は言うのだ。
だった一枚を君の為に仕上げる為に生還するよ…と。
だから私も必ず生還して、あなたの絵を探します!…と約束した彼女。
そうして彼は何も伝わらない絵を卒業生に進呈した。
真っ黒なその絵を見せながら、君たちはそのまま卒業してもいいのかい?と尋ねた。
僕が色彩を奪われたように、君たちも大切な何かを奪われている。
それをそのまま忘れたふりして、卒業しても構わないのか?と。
彼の必死の訴えに、元はワルイ子で、文化祭の一件でイイ子として卒業を迎えた生徒を始め、少しずつ彼の言葉に心を打たれた。
そうして「卒業式に泣いちゃダメ」の校則を破り、卒業生に涙させたのだ。
現れた果実はすぐに腐ったリンゴに姿を変えた。
そして生還とは腐ったリンゴを食らうようなもので、辛い事ばかりだ…とリンゴはいう。
それでも我を食らうのか?と。
彼は全く怯む事なく、それでも食べると断言。
すると腐ったリンゴは黄金のリンゴへと姿を変え、全生徒の元へと降り注いだ。
そうして降り注いだリンゴを食べ、それぞれの場所へと帰って行く。
彼も死の間際のあの瞬間へと戻り、最後の力を振り絞り、彼女の為に一枚の絵を完成させた。
そうして短い生涯を終え、再びこの世を去ったのだった。
月日は流れ、彼の子孫があの日の彼の絵を見つけた。
彼、四季島夏久によく似た面差しの青年は、四季島春彦。
絵を見つけた瞬間、これはここにしまっておいていいものじゃ無い。
沢山の人の目に触れるべき作品だ!…と思った。
そうして春彦の力で、夏久の個展が開かれた。
その個展の事をタウン誌で偶然知った彼女は、急ぎ個展の開かれているギャラリーへと向かった。
そしてあの日の約束通り、彼の残してくれた一枚の絵を見つけたのだ。
私はこの絵を見る為に生まれてきたんだ。
ずっと空っぽで何もなかった彼女。
生まれた意味も分からなかった。
けれど彼の残した絵に出会えたことで、その意味を見つけたのだ。
そうして絵を見つめて涙を流す。
そんな彼女に声を掛けたのが春彦だった。
一目でわかった。
この人がシキシマさんの子孫だ…と。
彼にとても良く似ているから。
「この絵が気に入りましたか?」と尋ねる彼に「ええ、とても。私はこの絵を見る為に生まれてきた気がするんです」と。
するとそんな大げさに聞こえる彼女の言葉に、「この絵はあなたの為に描かれたものだと、絵の前で泣いているあなたを見て確信しました。僕も、この絵をあなたに届ける為に生まれてきたんだと思います」と。
そうして彼女は彼の血を引く春彦と結ばれた。
きっと二人を結びつける為に、夏久はこの絵を残したのかもしれない。
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僕は君が好きだよ。
あの絵の前で涙を流す君を見て、僕は君に恋をしたんだ。
まるで当たり前のように、昔から決まっていたように。
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