ブランド:アイディアファクトリー
ジャンル:女性向け恋愛アドベンチャーゲーム
発売日:2018年9月20日
キャラクター紹介
CVは鈴村健一さん。
フクロウの探索部メンバーが寮として利用しているアパートの住人。
人気作家で、朱鷺宮や杙梛の友人。
女性が大好きと公言する彼は、よく友人の杙梛と共に芸者遊びに興じている。
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感想
怪しくて怖かったです。
いつも本当が見えなくて、すごく怖かったです。
紫鶴さんはそんな人じゃないと思いつつも、どうしてもあなたを心から信じられない何かが、あなたにはあったように思うのです。
はじめは軽い感じの人だな…と思いました。
誠実なタイプが好きなので、苦手な人かな?と思いました。
けれどアパートで何度も会っているうちに、段々とあなたに惹かれて行きました。
なのにあの事件があったから。
近づけは近づく程、信じたいのに不安になって行ったのです。
その不安の正体は、私が思っていたものとは違っていましたが、それが見えた時に納得出来ました。
先生を敬愛する想いも、素敵だと思います。
でも、何よりあなたが心配だから。
敬愛は心の中にしまって、形にとらわれずにいて欲しかったです。
それもあって、疑いが晴れたあとも、私にとっては怖い人という印象が拭えませんでした。
だからそこまで大好きになれなかったものの、あなたとの時間はとても素敵でした。
ありがとうございます。
ネタバレ
「殺してやる」
とてつもない怨念が込められた森恒の草稿。
彼はその言葉に取り憑かれていたのかも知れない。
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作家の彼は、学生の頃応募した小説が編集者の目に留まり、その編集者により森恒を紹介された。
推理小説家の森恒は、小説塾を開いており、そこには現在彼と並び人気作家となった平塚や、最近は落ち目で本屋の仕事が主となったものの、鵜飼昌吾の自殺未遂の件で再び名を馳せた笹乞などがいた。
三人は同じ師を持つ仲間だったのだ。
彼は師と同じ推理小説でデビューを果たすも、パッとせず、森恒のアドバイスで恋愛小説へと転向。
すると瞬く間に人気作家となった。
平塚も女性解放運動などにも尽力する、地位のある作家となっていた。
けれど笹乞だけは違っていた。
今はもっぱら本屋の仕事をし、フクロウに嫌味を言う日々。
森恒が亡くなった直後は、森恒の再来だと言われた時期だってあったのに。
塾生の頃、笹乞は「君の文章は悪くないんだが、トリックが面白くない。才能がないから作家には向いていない。田舎に帰れ」と言われた事があった。
そんな事は彼も平塚も言われていただろう。
それでも二人は立派な作家となり、人気もある。
なのに彼は森恒の言うように才能がなかったのだろう。
いくら書いても師に認められる事は無かった。
だから笹乞は考えたのだ。
トリックさえ面白くなれば、きっとボクの本は売れる…と。
そうしてその「面白いトリック」を手に入れようと動き出した。
それが自身の師である森恒の殺害だ。
森恒を殺害する事で、師である森恒の考えたトリックが記された備忘録を手に入れる計画だ。
そうして作家として認められたいと言う、自分勝手な願望を叶える為、師を殺めた笹乞は森恒のトリックを使って発表した小説で、「森恒の再来」と評価された。
けれどそれで終わりだった。
二作目、三作目と作品を発表するも、森恒の真似だと言われ次第に評価は落ちていき、遂には備忘録に記されたトリックも使い果たしてしまったのだ。
そうして落ちた笹乞だったが、自身の書店に置いていた自らの手書きの和綴じ本を買った鵜飼首相の息子の昌吾が、自殺を図ると言う稀モノ事件が起きた。
それがまた彼の名を世に知らしめ、今度は好事家達が彼に群がった。
自分にも稀モノを書いて欲しいと。
店は閉めるようになり、連日金持ち連中からの接待を受けていた。
最初は嬉しかった。
ずっと自分を認めなかった世間が、遂に自分を認めたように思えたから。
でもすぐ虚しさでいっぱいになった。
笹乞にも分かっていたのだ。
好事家達は笹乞の話が読みたい訳じゃない事が。
ただ、稀モノが欲しいだけだと言う事が。
だから笹乞の気持ちは彼に向かった。
同じ弟子だった。
仲間だったのに、アドバイスに従い恋愛小説に転向し、大成功を収めた彼が許せなかった。
そして平塚の事も。
そうして笹乞のそんな思いが、あの事件を起こした。
それはウエノ公園で起きた事件で、二十歳前後の女性が狙われ、首を紐で締められ、口にライラックの花を詰められる事件だ。
更に現場には汀紫鶴の本が落ちていた。
そんな事件が立て続けに起こったのだ。
最初は誰も疑わなかった。
けれど何度も続くと警察も世間も疑いだす。
犯人は彼なのではないかと。
本当は彼を恨む笹乞が、彼に疑いが向くように仕向けて起こした事件だったのに。
だから彼女は不安になってしまった。
最初は彼の飄々とした態度も、女性好きな行動も受け入れ辛く苦手だったはずなのに。
いつしか彼の事を慕うようになっていたから。
だから疑いたく無かった。
それでも疑ってしまう。
そうしてなんとか疑惑を晴らしたいと考えた彼女は、何度か上司の朱鷺宮に、自分が囮になりたい…と申し出た。
けれど今回現場に落ちていたのは印刷の本。
印刷の本は今まで一度も稀モノになった事がなく、フクロウの管轄ではなかった。
そして今は燕野が居る。
無関係のフクロウが出張ると、どうしても燕野に迷惑をかけてしまう。
…とそんな理由から、決行に至れずにいた。
所が、任意とはいえ彼が連行された時、彼女は再度頼んだ。
囮になりたい…と。
そうして全員で警護する事とし、囮作戦を決行に移したのだ。
話を聞いていた燕野は、フクロウの皆さんは揃ってウエノ公園に散歩に行くのが好きなのであります…と、知らなかったことにしてくれると言うのだ。
そうして何日も明け方まで囮を続けたある日、事件は起きた。
その日は霧が深かった。
彼女達はいつものようにウエノ公園へとやって来た。
そしてその日は彼もまた犯人を知った上で、自ら動いた日だった。
深い霧の中に、最初は彼と親しい芸者を見かけ、心配になった。
その直後、ナイフを持った笹乞が現れたのだ。
そうして更には彼までもが。
慌てた彼女が追いかけると、笹乞は彼を狙っていた。
彼女が彼らを深い霧の中で見つけたお陰で、誰も命を落とす事なく、事件を終わらせる事が出来た。
そうして笹乞はなぜこんな犯行に及んだのか、備忘録を盗んだ所から話してくれた。
けれど目的は少し違っていた。
最初は笹乞自身も彼に罪を着せる事が目的だったはずなのに、彼と平塚が仲良く話をしているところを見て、なぜそこに自分だけが居ないのか?と悔しくなったのだと言う。
だから平塚と彼とそして笹乞の三人で、森恒の元へ行こうと思ったそうだ。
そしてもう一度森恒に教えを乞い、今度こそ間違えずにちゃんとした作家になりたい…と。
そうしてライラック事件は終結し、彼女は彼と結ばれた。
けれど彼女は落ち着かなかった。
朱鷺宮から彼は森恒の草稿を遺品として大事にしている疑惑があり、それは稀モノなんじゃないか…と聞いた時も怖かった。
そうして実際に彼の部屋を自分の手で捜索もした。
見つからなかった。
更には笹乞逮捕の日、草稿のことに触れた笹乞に「あれは誰にも触れさせられないほど強い憎悪だから、燃やしてしまった」と彼は答えても居た。
それでも何かを本能的に感じ取っていたのかも知れない。
ある日彼を訪ねると部屋が暗く、「紫鶴さん」と声をかけ扉を開けると、暗い部屋に禍々しいアウラが漂い、そのアウラに体を絡め取られた彼が、人形を指していたのだ。
繰り返し、繰り返し。
そうして彼女は彼が捨てられずにいた森恒の草稿を奪い、焼却炉へと走った。
手にしただけで、森恒の「殺してやる」と言う声が響く。
悲鳴をあげてしまうほど、恐ろしい何かに絡みとられ、押し潰されそうになった。
それでも処分しなければ…と必死に走る。
そうして彼女が焼却炉へとその草稿を投げ捨てると、彼女を追ってきた彼が悲鳴をあげて倒れてしまった。
先生を殺した犯人を見つけたら、燃やすつもりだった…と言う彼だったが、もうアウラに絡められ、自分では処分出来なくなっていたのだろう。
けれどそのアウラを彼女が断ち切ってくれた。
そしてやっと彼は森恒の死の呪縛からも、解き放たれたのかも知れない。
恋愛小説を生業にしている彼だが、彼の作品はいつも最後は心中ばかり。
それが最上の愛情表現だと思っていたから。
けれど彼女と過ごすようになり、彼は少し変わったのだろう。
今度は異国へ向かう船に愛し合う二人が飛び乗り逃げる…と言う結末の話を書いてみると言うのだ。
今はそれもいい終わりだと思えるからと。
これから彼の生み出す物語は、少しずつその形を変えていくのかも知れない。
彼女と言う恋人を得た事で。
そしてそんな幸せな結末が、読んだ多くの人を幸せにする日もそう遠くないだろう。
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僕としては本気で前向きに検討したいと思っている。
それこそ明日挙式だっていいくらいだ。
この間、ずと一緒に居ると言ってくれたよね?
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