シナリオ紹介
CVは前野智昭さん。
父は西班牙人で、異国の血がまじっている。
母は伴天連を信仰していて、切支丹狩りに遭遇。
異国の血、伴天連、彼にとっては生きにくい幼少期の物語。
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感想
本編の時は攻略していなかったので、時折祈りを唱えている事から、切支丹である事は知っていましたが、あの美しい容姿は、父が西班牙人だったのですね。
そういう実彰さんの過去について、今回の百夜綴りのお話で知る事が出来ました。
鎖国令が敷かれる時代に、彼の境遇はあまりに生きにくく、苦労を重ねて来た事を想像に難くないのですが、改めて触れる事が出来、切なくなりました。
そんな彼だからこそ、彼女と幸せになって欲しいと願わずには居られません。
前野さん、ステキな実彰さんをありがとうございました。
ネタバレ
南蛮との貿易が盛んな肥前国。
彼の母はそこで西班牙人の彼の父と出会った。
二人は愛し合い、彼が生まれ、幸せな時を過ごしていた。
所が彼がまだ四歳の時、鎖国令が敷かれた事から、彼の父は強制的に国に帰されてしまったのだ。
父を失った母は、今まで以上に伴天連の神に祈りを捧げるようになった。
母が捧げる祈りの言葉。
その意味は分からないものの、優しいそれを心地よいと感じた彼は、いつしかそれを唱えるように。
けれど母には言われてしまった。
外では決して唱えないように…と。
普段は部屋で遊び、外に出るのは買い出しの時のみ。
部屋では母によく絵本を読んで貰っていた彼。
それも異国の血を引く彼を好奇の目から守りたい母の愛情だった。
たまに買い物に出る時には、彼の目立つ容姿を隠す為、頭巾を被せていた。
そうして母が守ってはいるものの、それでもひと目を引いてしまう。
けれど彼には分からない。
自分が頭巾をかぶらなければならない理由も、人々が自分を好奇の眼差しで見る理由も。
そんな生活の中でも、父の居ない寂しさを感じる事がないほど、母は彼を大切に育ててくれたのだ。
けれど、そんな二人の密やかな幸せも長くは続かなかった。
ある日二人の住む肥前国でも切支丹狩り行われるようになってしまったから。
騒ぎを聞きつけた母が、彼を納屋に隠してくれ、「何があっても出て来てはだめよ」と言い聞かせた。
けれど騒がしかった辺りが静まり返った頃、彼は母が心配になり、納屋から出てしまう。
すると家の中はあらされていて、そこに母の姿はなかった。
母が作ってくれた頭巾をかぶり、一人街の外へ。
そこで大人たちの様子から、役人がよく出入りしている場所へと行ってみた彼。
たどりつたいそこで、人混みをかき分けてみると、そこでは踏み絵が行われ、踏めないものは次々と処刑されていた。
そうして母の番となったが、踏むことが出来なかったため処刑されてしまった。
息子の見ている前で。
「私の愛するひとたちが幸せでありますように」と優しい祈りの言葉を残して。
衝撃的な光景を目にした彼は、気づいたら家の納屋へと戻っていた。
するとそこに阿蘭陀人商人が彼を探しにやってきた。
商人は父の友人で、日の本に残る事を許された阿蘭陀人である事から、父から「妻子を頼む」と託されていたという。
そうして切支丹狩りの噂を聞きつけ、急ぎ駆けつけてくれたものの、母の処刑には間に合わず、彼を探してくれていたのだ。
その後、商人と共に暮らす事になった彼は、阿蘭陀商館で剣術を習わせて貰っていた。
「立派なサムライになれ」と。
それが父の意思とも知らぬままに。
そうして5年の月日はまたたく間にすぎ、商人も母国に帰らなければならなくなった。
彼の身を案じた商人は、彼を阿蘭陀に連れ帰れるよう、手を尽くしてくれたものの叶わず、彼の奉公先を探してくれ、まだ元服前であった彼に「実彰」の名を与え、孫六兼元を授けてくれた。
それはどちらも彼の父が、彼に…と友人である商人に託したものだった。
奉公先では異人の子と蔑まれ、沢山の嫌がらせも受けたがただひたすら耐えていた。
他の使用人の子どもたちからの嫌がらせで、納屋に閉じ込められる事もしばしばだった。
そんな中、一人だけ優しい奉公人の女性がいた。
彼が納屋に閉じ込められて夕飯を抜かれてしまうと、彼に差し入れを届けてくれたりと、色々と親切にしてくれていた。
阿蘭陀商館を出て以来、居場所といえる場所もなく、ただ耐える毎日。
どんなに辛い目にあっても、祈りの言葉を唱えひたすら我慢をしていた。
そんな彼に、その女性の優しさはとても有り難いものだった。
所がさらなる不幸が彼を襲う。
彼が使用人の子どもたちの嫌がらせにより、納戸に閉じ込められていた時の事。
彼の身を案じたあの女性が、いつものように差し入れを持ってきてくれた。
けれど、その日は間が悪かった。
女性が差し入れを届けてくれたその時、彼は異国の神へと祈りを捧げていた所だったから。
そんな彼の姿を見たその女性は、「異教徒がいる!」と大声をあげた。
呪い殺される…と怯える女性の声に、慌てた彼は最低限の荷物を手に、奉公先から逃げようとするものの、声を聞きつけた人々に石を投げられ箒で叩かれた。
あんなに優しかったあの女性までもが、彼をみんなと一緒になって叩くのだ。
何がいけなかったのだろう?
彼はただ幸せになりたかっただけなのに。
辛くて悲しくて、だから神に祈りを捧げていただけだったのに。
こんな辛い目にあう為に、祈りを捧げていた訳じゃない。
この世に神などいないのかも知れない。
だって祈りは届かないのだから。
あんなに毎日祈りを捧げていた罪のない母が殺され、同じく幸せになりたくて祈る自分も、今こうして殺されかけている。
なんという理不尽な世界。
本当に裁かれるべき罪人は他にいるだろうに。
なぜ罪のない自分たちがこんな目にあわなければならないのだろう?
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