キャラクター紹介
CVは松岡禎丞さん。
館で出会った男の子で、狐のお面をかぶった謎の人。
ゲーム序盤で化け物に襲われている所を助けてくれたのも彼で、彼が銃で化け物退治をしたのを見た事をキッカケに彼女達も戦う事に。
そんな風に館で生き残る為のヒントをくれた人。
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感想
報われないエンドでした。
彼は報われてくれないと、悲しすぎる!
みんなが出会ったあの世界で、1人10年も過ごしてきた彼。
記憶は執着だから、それがあればどれだけでも留まれる世界。
そんな中、ただひたすら10年間、ヒロインにリボンを返す事だけを考えてた彼が切なくて。
もう自分の事すら分からない。
誰に返す為にまっているのかすら分からなくなるくらい、途方も無い時間の中、1人ずっと待ち続けた彼の想いが切なくて、美しかったです。
山都くんも紋白くんも凄く素敵で、この双子がとても私のツボなようです(笑)
松岡さん、素敵な紋白さんをありがとうございました。
ネタバレ
万華鏡の完成まで後一歩。
残るは彼女のヘアピンの中の欠片のみ。
その欠片を持つ彼らは、館の主である緋影から招待を受けた。
けれど彼らはすぐにその招待に応じる事はなかった。
「もう少し時間が欲しい」と彼女が提案したから。
そうして万華鏡完成を目前にし、山都、鴉羽、鉤翅の三人はなにかヒソヒソと話すように。
それは彼女だけが思い出していない、サマーキャンプの事故の話し。
彼女には知らせないままがいい…と三人で決めたもの。
だから彼女には聞かせられないだけだったのに。
それでも三人を遠くに感じてしまう。
まるで自分だけが仲間はずれのように感じてしまう彼女。
そんな彼女に紋白が声を掛けた。
彼は一人緋影と戦う決意をし、それを彼女に告げたのだ。
だって、みんなは生きている。
でも、俺は死んでしまっているから。
だから自分を犠牲にしても、みんなを元に世界に返さないと。
そう、彼は知らなかった。
自分が病院のベッドで意識不明のまま眠っている事を。
だから思っていたのだ。
ナツキと共に死んでしまっていると。
そんな二人が館にいるのは執着があるから。
ナツキは幼い頃彼女と交わした結婚の約束をどうしても果たしたくて。
彼は彼女に預かっていたリボンを返したくて。
けれど、そのリボンも「これを持っているといい。俺も何度も助けられた」と、彼女に既に返してしまっていた。
だからもう思い残す事なんてなかったのだ。
「緋影くんは強い。勝てないかも知れない」心配する彼女だったけれど、「決して諦めないで。希望を持っていて」と告げた彼。
まるで彼女に言うように口にした言葉。
けれど、自信のない自分自身を励ましている言葉だったのかも知れない。
その夜、既に眠ってしまった彼女のおでこにキスをした彼は「これは勇気が出るおまじない」とつぶやいて、一人万華鏡を奪う為に緋影の元に。
そうして訪れた彼に、緋影は記憶を見せた。
それはまだ幼かった頃、いつも彼女に優しくして貰っている彼が羨ましくて、ずっと弟に嫉妬していた兄の記憶。
「カズヤなんていなくなればいいのに」そんな風に思っていた記憶。
でも、それは本心ではなくて、ただ嫉妬心から湧き上がった感情だったのに。
俺なんて居ない方がいいんだ…と思ってしまう彼。
更には館に来る少し前の兄の記憶。
それは病室でのもので、いつまでも目覚めない弟に思わず吐いた弱音だった。
正直毎日病院に来るのは辛いんだ。
時々居なくなればいいのに…なんて思っちまう事もある。
なぁ、カズヤ。
俺さ、サッカー辞めたんだぜ。
夢だったのに。
そんな兄の言葉。
それまで自分が生きている事も知らなかった彼だったが、生きたいた事に驚き、更にはその事が兄に迷惑を掛けている事を知り、深く傷ついてしまった。
あぁ、そうか。
自分が悪いだ。
俺なんて居ない方がいいんだ。
迷惑ばかりかけている。
そうして苦しみだした彼の元に駆け寄った鉤翅。
だから彼は苦しいながらも訊ねてみたのだ。
「ナツキも俺の事邪魔?」と。
すると鉤翅は「そうだね、そうかもしれないね」と答えたのだ。
それがトドメだった。
その言葉に絶望した彼は、そのまま心の闇に囚われて、奈落へと落ちてしまった。
一方紋白が居ない事に気づいた彼女は、緋影の使いで現れたウサギの「目印を用意して置きます」との言葉を思い出し、一人緋影の元へ。
だって、彼は一人で緋影と戦うと言っていたから。
そうしてたどり着いたその部屋には大きな穴があり、傍には鉤翅が佇んでいた。
「これはなに?」と訊ねた彼女に、「カズヤが落ちてしまったんだよ」と答えた鉤翅。
それは絶望した紋白が先程落ちてしまった奈落の穴だったのだ。
助けないと!という彼女に「奈落に落ちたんだ、無理だよ」という鉤翅。
でも彼女は諦められない。
だってカズヤは自分が生きている事も知らないまま、一人でずっとここにいたのだから。
仲間でいられるなら、顔も名前も全部あげる…という程までに、彼は孤独だったのだから。
そうして彼女は万華鏡の最後の一欠片が入っていると言われたヘアピンを鉤翅に託した。
万が一私が戻らなかったら、これを使って万華鏡を完成させてみんなで脱出して!と。
鉤翅がみんなを裏切っているとも知らぬままに。
そうして奈落へと飛び込んだ彼女。
そこにはただただ闇が広がっていた。
真っ暗で何も見えない世界。
けれどどこかから風を感じるし寒さがある。
良かった、ここは虚無なんかじゃない。
少なくとも寒さはある。
そう思った彼女は、行き先もわからぬままに、見えない闇の中を歩く。
「カズヤくん」と彼に呼びかけながら。
ただただ一人歩いているうちに、次第に不安が押し寄せてくる。
だって真っ暗なその世界は、上も下も、右も左も何もわからなくなる程、方向感覚を麻痺させてしまうから。
更には足を動かしている感覚はあるものの、歩けているのかも分からない状況に。
だって真っ暗なそこで、自分が進めているかを確認する術など何もないから。
そんな時思い出した彼の言葉。
「決して諦めないで。希望を持って」
そうすれば帰れると彼は教えてくれたから。
だから諦めずに進もうと、彼から預かったリボンを強く握りしめた彼女。
するとそのリボンが彼女をどこかへと導く。
そうだ、きっとカズヤくんの所に連れて行ってくれるんだ。
そう思った彼女の頬に、ポタリポタリと落ちるしずく。
そのしずくが落ちる度に、彼女へと彼の記憶が流れ込んだ。
初めてここに来たばかりの彼は、館でナツキと出会った。
出会ったナツキは、緋影を紹介してくれ、ここの世界について教えてくれた。
そうして最初は緋影の目的の為に協力した彼だったが、緋影が自分の目的の為にこの館に落ちてくる魂を次々と利用し、本当は天国に行けるはずの魂が壊れて化け物になっていくのを見ている事が辛くなってしまった。
彼は優しい人だったから。
だから彼は緋影の元を離れる事を決意。
そうして元の世界でも友達だったナツキを誘った所、「僕は緋影の所にいる。僕を必ず生き返らせると約束してくれたから」と、断られてしまった。
ナツキにはどうしても果たしたい約束があったから。
そのために生き返らなければならなかったから。
どんな事をしても、彼女と結婚する約束は果たしたかったのだ。
そうして意見の分かれた二人は決別し、彼は一人で過ごす事を決めた。
けれど話し相手もなく一人過ごす日々は長く辛いもの。
あいつにリボンを返さないと!
サマーキャンプのあの日、彼女が巻いてくれた大切なリボン。
それだけが彼をつなぎとめてくれた。
毎日毎日、それだけを考え続ける。
もうどれくらいの時が過ぎたのかも分からない中で。
この世界は現世と常世の狭間だから、
いつかずっと待っていたら、あいつもここに来る。
何年先かは分からないけど、あいつが来たらリボンを返すんだ!
そんな風に思っていたのに。
一人で過ごす時の中、記憶の輪郭は次第にぼやけてくる。
ダメだ、記憶はここにとどまる為に必要なもの。
記憶が消えたら、顔が消えて、体も消えて。
そうして成仏してしまったら、もうあいつにリボンを返せない。
そう思って必死に記憶をつなぎとめたいのに…
あれ?あいつって誰だろう?
誰でもいい、リボンを返すんだ。
…と、もう返す相手も分からない。
あれ?俺はなんでここにいるんだろう?
あっ、そうか、リボンを返さないと。
ここに来た理由も、とどまる目的も忘れかけてしまう。
それでもリボン返すという事だけは、忘れずに居られた彼。
そんな風に、彼にあるのは彼の思考だけ。
父さんや母さん、兄さんはどうしてるんだろう?
兄さん?…俺、兄弟いたんだっけ?
それより、俺は誰?
怖い、怖いよ。
もう、何もわからないよ。
そうだ、記憶が消えたら、次は顔が消えるんだ。
次第に自分が誰かもわからなくなる。
何もかも消えてしまいそうな恐怖の中、彼は自分の顔に触れてみた。
するとぼんやりとモヤのかかったような感触が。
怖くなった彼は、消えかかっているのかも知れない!と、慌てて館にいる他の者達のように、お面をかぶった。
それがあの狐のお面。
消えかけてしまったかも知れない、その顔を隠すお面。
良かった、これで安心だ。
もう心配ない、もう怖くない。
待つんだ、リボンを返すまで。
そうして一人孤独と戦い続けた十年。
たった一人で、何度も何度も消えてしまいそうな恐怖に抗いながら。
そんな彼の記憶に触れた彼女は気づいた。
そうか、これはただのしずくじゃない。
きっとカズヤくんの涙なんだ…と。
だから彼女は足を速めた。
早く彼の元にたどり着きたくて。
孤独と戦ってきた彼をもう一人にさせたくなくて。
そうしてうずくまる彼の元へ。
声を掛けたものの、最初は彼女の事が分からない様子の彼。
けれどいくつか言葉を交わすうちに、彼女がリボンを返す相手で、既にリボンは返した事を思い出した彼。
でももうリボンも返したし、俺がいるとみんなに迷惑がかかるから。
だから帰らない。
帰ろうと誘ってみても、帰らないという彼。
迷惑、掛けてるだろうね?
でもね、それはお互い様でしょ?
迷惑かけない関係なんて、仲間じゃないから。
それにみんなが掛けられてるのは、迷惑じゃないよ?
みんなはカズヤくんに迷惑掛けられてるんじゃなくて、心配を掛けられてるだけ。
だから帰ろう、みんな心配してるから。
彼女のそんな言葉に、彼もついに帰ろうと思えるようになった。
そんな二人が手をつなぐと、二人をあのリボンが導いてくれる。
どこに行くのか先は見えないけれど、きっと元の世界に連れて行ってくれるに違いない。
二人一緒に。
所がしばらく進むと、上り坂になり、そこでなぜか彼の足元だけが泥沼のように彼を鎮めようとする。
二人で帰りたい!
必死にリボンも彼の手も掴む彼女。
けれどこのリボンが切れたら彼女は元の世界に帰れない。
だから彼女だけでも…と思った彼は、自ら手を離したのだ。
「迎えに来てくれてありがとう」と、別れの言葉を残して。
その後気づいた彼女は病院に居た。
あの湖に行こうと、タクヤとアキと三人で乗ったバスは事故にあい、彼女も数週間眠ったままだったそうだ。
一緒に事故にあった二人は、カズヤ同様、未だ眠ったまま。
カズヤも未だ目を覚まさない。
あぁ、私は一人だけ戻って来てしまったんだ。
みんなの事をおいて。
そう気づいた彼女は毎日カズヤの病室を訪れるように。
いつか目覚める日が来ると信じて。
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