逢魔が刻~かくりよの縁~【颯】

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逢魔が刻 ~かくりよの縁~ - PS Vita

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キャラクター紹介

CVは細谷佳正さん。
主人公が幽世に誘われ、二番目に出会うあやかし。
木霊である彼は、精霊というか、八百万の神の中の一人というか、霊的にとても強い存在。


木霊であるが故に、自分から言葉を発してもそれが誰にも届かないため、人と交流する事が出来ない。
それでも霊的に強い存在である事から、この幽世の神である月白により、鎮守学舎に入って夜警に協力するよう頼まれていた。


現世からふらりと現れた主人公が、彼の言葉を汲み取ってしまった事から、二人は絆を深めた。


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感想

木霊としての特性と、彼女の特別な力の関係がとても素敵に描かれていて。
だからこそ感動しましたし、他の人攻略しづらくもあります(笑)


彼女の力の存在意味を考えると、どうしても彼の存在は大きいんですね。
だから他の人を攻略したら…と考えさせられてしまうものの、やっぱり素敵だなって思ってもしまうのです。


誰とも会話出来なかった…という設定から、最初の細谷さんの話し方になんとなく違和感を覚えたのですが、彼の置かれていた状況を考えると「なるほど!」と思える演じ方で、やっぱり凄いなって思いました。


本当に色々考えて演じてくれている事が、とても素敵でしたし、感動させられましたね。


物語が進むに連れて、彼の想いの変化や覚悟が現れてきて、話し方がどんどん変わってくるのも凄いなって思いました。


彼は一番最初に攻略した事もあり、「共通長いな」って印象の中での攻略でしたが、個別に入ってからどんどん素敵になって。
甘さも十分だったので、何度も悶えさせられました!


純粋で真っ直ぐな人なので、気持ちも見えやすくて、そんな所も好ましかったです。


そして後半の彼の決断とその行動に、号泣させられました。いつも一番に彼女の事を考えてくれる彼の深い愛情がとても素敵でした。
物語の終わり方も、凄く良かったと思います。


彼女を一番に…というか、本当に彼女の事しか考えていないというか、とにかく何よりも彼女なんですよね。
そんな想いの強さに、その想いの強さから来る行動に、何度も涙させて頂きました。


細谷さん、素敵な颯をありがとうございました。


ネタバレ

おまえが魂ごと、おまえという存在を俺に捧げてくれるなら、俺はその魂ごと、おまえを愛したい。


-----


日本には八百万の神と言われ、沢山の神が存在する。


幽世に住まう彼は木霊と言う存在で、沢山存在する神の中の一人。
水、緑、大地、風、そういった自然のものから生まれた神。


木霊と言う存在の特異性から、彼の声は誰にも届く事がない。
人が発した言葉をなぞった時だけ、その声が他へと届く。


沢山のあやかしの住まう幽世にあっても、彼は孤独な存在だった。
だって、彼の声は誰にも届かないから。


彼の住む幽世の鎮守神は月白。
その月白が自分の幽世を乱す凶徒となった存在を排除する為、鎮守学舎という学校を造り、そこの生徒が夜警と称しその凶徒を討伐していた。


彼もまたその学舎の夜警隊の一人。
木霊は神だから、とても霊力が強く、他者とコミュニケーションが取れないものの、その力を買われ、学舎に身をおいていた。


けれど、彼は幽世の平和になど興味なかった。
果てしないほどの孤独な世界。
誰とも言葉をかわさない事が当たり前の世界を生きる彼にとって、自分以外の他人など、どうでも良かった。


それでも月白の勧めで入った鎮守学舎の授業にも参加し、夜警も自分の所属する宵宮班の当番の日は、面倒ながらも参加はしていた。
ただ積極的ではなかっただけ。


特に守りたいものもなければ、誰にも何にも興味がなかったから。


そんな彼の生活は、ある出会いがキッカケで大きく変わってしまった。
それが主人公との出会い。


彼女は現世で高校に通う普通の女の子。
両親は海外を飛び回り、あまり彼女の側にいる事はなく、幼い頃は祖母と共に過ごしていた。


とても信心深い祖母は、良く彼女を連れては近所の狐魄神社の掃除をしていたし、物でもなんでも魂が宿っているから、大切に心を込めて扱うようにと教えてくれたりした。


そんな風に育った彼女は、現世で知らぬ間に徳を積んでいたのだった。


そうして祖母が他界し、両親は相変わらず仕事で日本にいない為、高校生ながらに一人暮らしをしていた。
幼馴染で高校の先輩でもある柏木の生徒会の仕事を手伝った帰り道、いつものように下校していた逢魔が刻。
彼女は突然のめまいに襲われ、気づくと幽世へと誘われていた。


そうして彼の声が幽世へと現れた彼女に届いた事から、二人の運命は大きく動き出した。


-----


この幽世で、この世界で唯一彼の声を掬える彼女は、彼に連れられて鎮守学舎へ入学。
そうして彼女同様に現世から幽世に迷い込み、現在は鎮守学舎の教官をしつつ夜警隊の宵宮班を率いている宵宮のクラスの生徒となり、彼らと共に過ごす事に。


彼女が来た事で、ずっと誰とも言葉をかわす事が出来なかった彼が、初めてクラスメイトや教官たちと彼女を通して意思の疎通が出来るようになった。


俺は、木霊だから。
誰にも声が届かないのは当たり前。



彼の暮らしはそれが常識だったのに。
どれほどの時間だったのだろう、誰とも話す事のないまま過ごしていたその当たり前の時間が、ほんの僅かで塗り替えられた。


あぁ、俺の声は彼女に聴かせてための声だったんだ。


今ではそう思える程に、彼にとって、彼女はなくてはならない存在になっていた。


幽世に人が迷い込むと、異能が芽生える事がある。
彼女にもまた、その異能が芽生えていた。
その能力が孤独だった彼の声を掬った。


そう、彼女の力は「掬う」ちから。
見えない思い、聞こえない声、それらを「掬い」そして「救う」ちから。
攻撃こそ出来ないものの、人には感じ取れないものをすくい上げるから、違和感を敏感に察知する。
そうする事で、敵がどこにいるのか?また対峙している敵の弱点を知る事も出来た。


彼女のその能力のお陰で、彼は他のメンバーとの連携を取る事が出来、夜警の仕事も順調にこなせるようになった。


更には、鎮守神である月白が、彼女が幽世に来てからずっと身につけていた髪飾りを用い、彼の言葉を他のみんなにも届ける依代とした事から、彼は自分の声で、言葉で、彼女以外のみんなとも話が出来るように。


いつも一人きりの世界で生きてきた彼。
宵宮班のみんなと共に過ごしても、彼の心はひとりぼっちだった。
そこに彼女が現れ二人になり、今ではみんなの仲間として過ごせるまでに。


一方、夜警隊が幽世の鎮守の為奔走しながらも、幽世は彼女が迷い込んで来た頃から、次第に治安が悪くなり、感じる力の強い彼女や、霊力の高い彼にも見える程に、世界はほころび始めていた。


そのほころびが彼らにも害をなした。


彼女が幽世に来て初めて会ったあの日、彼は彼女と約束を交わしていた。
俺がおまえを守るから」と。
神でもある木霊の彼は誠実で、言葉を決して違えない。
それに何よりとても強かった。


それでも幽世の存続にも係る大事件となった、死魔による土蜘蛛騒動の時、教官の指示で別行動をしていた彼は、彼女を守る事が出来なかった。


彼女の声が聞こえた気がして、探してたどり着いた時、彼女は既に傷を負っていたのだった。


必ず守ると約束したのに。
何があっても、俺が守ると約束したのに。



彼が駆けつけた事で、彼女たちは命を救われたものの、彼はひどく後悔していた。
約束を果たせなかった事を。


そして同時に知ってしまった。
どれほど彼女が大切なのかを。


元々彼女の事は好きだった。
それはあやかしに好かれやすい彼女の性質や、自分の声を掬ってくれた事からだったが、共に過ごす時間の中で彼女と言う人を知るに連れて、彼の中での好きの意味が変わってきた。


何に変えても守りたい程、俺にはおまえが大事なんだ。


幽世の平和などどうでも良かった彼が、彼女が守ろうとする幽世を共に守りたいと願ったし、彼女が大切だから、どんな危険からも守ってやりたいと。
今では自らの意思で積極的に夜警隊の任務もこなしていた。


そうしてまた彼女も、ずっと帰りたいと望んでいた現世に帰りたいと思わない程に、彼に惹かれていた。


そうして二人は互いの想いを交わし、以前よりも強い絆で結ばれた。


けれどその頃から、彼女の力はとても強くなり始めた。
そして同様に、彼の力もとても強まってきた。


その原因が彼女の特異な性質、神籬のちからにあった。
神籬とは、神に力を与え、神を癒やすもの。
その彼女の能力が、共にある彼を更に強くしていたのだった。
また、彼女のその能力も、神である彼の側にある事で覚醒しようとしていた。


俺は彼女が好きだから、絶対に離れたくない。
誰にも渡したくない。
でも、彼女が神籬ならば、この手を離すしかないかも知れない。



彼はそう考え始めていた。
幽世にいる限り、沢山存在する神なるものが、神籬の力を欲して彼女を奪いにやってくるから。


例えば月白のように力の強い神ならば、彼女を神籬して側においても何ら問題ないかも知れない。


けれど彼では、月白ほどの力がないから。


神籬は神と契約を交わした時から、神の所有物となってしまう。
その魂は付き従う神と同化し、神の一部も同然となる。


その儀式に祭し、神籬も神も、共に成熟した能力を宿していれば、何ら問題なく神籬になれるが、仮にどちらかが未熟だった場合、彼女は彼女でなくなってしまう。
意思が消え、言葉を失くし、ただの道具として付き従う存在に。


だから彼は怖くなった。
誰にも渡したくないから、出来る事なら自分の神籬になって欲しい。
けれど、それは彼女が彼女でなくなるリクスを伴う。


かと言って、今のままこの幽世にいるのなら、常に彼女は狙われる存在になってしまうから。


だから彼は決意していた。


彼女を現世に帰そう。
月白ほどの力はなくとも、俺の依代であるあの木を使えば、現世への道を開く事が出来るだろうから。



そうして彼は、彼女が完全に覚醒してしまう前にと、彼女に「大事な話がある」と連れ出し、自ら依代である木を傷つける事で現世への道を開いて彼女を半ば無理やり現世へと送り返した。


その行為は彼自身の魂を傷つける行為で、現世への道を開いた事で、彼は随分と消耗していた。


存在が消えずに済んで良かった。


あんなに何もかもどうでも良かったのに。
この幽世も、自分の命でさえ。
なのに今は自分という存在が残った事を嬉しいと思ってしまう。


それは彼女に掛けた言葉があったから。


俺は現世にも存在してるから。
風の中に俺の声を聞いて俺を感じて欲しい。
ずっと忘れない。
愛してる。



そう彼女に告げた言葉。
それを違えないためにも、消えてしまう訳にはいかなかった。


そうしてボロボロの体にムチを打つように、彼は出かけて行った。
月白が一度退けた死魔が、再び幽世に戻ってきていたから。
それを退ける為に。


そうして現場には既に探偵の常磐がいて、彼を手伝う形で、無事に死魔を退けたものの、その場に居た常磐にも、後から駆けつけた同じ宵宮班の奏太にも、もう彼の声は届かない。
彼女が近くに居ない今、月白の作ってくれた依代は機能しないから。


ただ元に戻っただけ。
元々声が届かない存在だったんだから。



そう思ってみるものの、知ってしまったから。
自分の誰にも届かなかった声を掬ってくれた優しい愛おしい存在を。


一方彼女の方もまた、突然戻された現世で彼を思っていた。
彼の言うように風の中に彼を感じたとしても、それは昨日まで側にいてくれた彼じゃないから。


それでも戻ってしまった現世。
幽世に戻りたくとも戻り方も分からない。
そもそも行きたいと願って行った世界じゃなかったハズなのに。
彼と出会い、彼と過ごしたそこが、彼女にとっての大切な場所となり、現世に来た今実感していた。


私の居場所はここじゃない。
幽世の颯の隣なんだ
…と。


そうと実感しつつも、無情に過ぎる時の中、ある日の放課後の帰り道。
共に帰宅していた柏木が、思い出話を始めた。
その話の中に「柏木の樹」という木の話があり、柏木の家はこのあたりの地主で、狐魄神社の奥の池の側に、土地を守る為とずっと昔、柏木の先祖が植樹したものなんだとか。


そう、現世にもあったのだ。
彼の依代となっていたあの木が。


いつか彼の姿が柏木ににている事を話した時、木霊は魂が実体化する時に、何かを模しているハズだから、きっと何処かで何かの関係があったのかも知れない…と話していた彼。
その何かの関係が、柏木の家が彼の依代を植樹し、あの土地を守ってきたという繋がりだった。


そうして柏木に木の事を聞いた彼女は、家に帰宅する事もなく、急ぎそこへと向かった。
ついたそこは、あの日彼に無理やり現世へと送られたあの場所と同じ場所。
霊的な力の強い場所だと彼から聞いていた彼女は、一か八かで、その池へと飛び込んだ。
その昔、池で溺れて幽世に一度行ってしまった時のように。


息が苦しくても彼女は深く深く潜り続けた。
どうしても彼に逢いたくて。
ただ必死に彼へと手をのばすように。


そうしてたどり着いた景色は、さっき飛び込んだ池と変わらないものの、彼女はその能力故に、空気で分かってしまう。
ここが幽世であると。


戻って来られた。
早く颯を探さないと!



駆け出した彼女は、最初に彼と出会い、彼が好きだと教えてくれた場所へと向かい再会を果たした。


そうして彼に伝えたのだ。


颯の神籬になりたい…と。


幽世が彼女が去る前よりも悪い状態になっている事はすぐに感じ取れたから。
自分が神籬として力を使う事でこの世界を救えるのなら、彼と共に救いたいと思ったから。


だって、とても大切な場所だから。
彼と出会い、想いを交わし、大切な仲間も出来た彼女の居場所だったから。


最初こそ、彼女の身を案じて提案を受け入れられなかった彼だったが、再び手にした彼女をもう手放す事も出来なくて。
万全の準備を整えて、愛する彼女と共にこの世界を守る事を決意。


月白の話によると、二人の絆の深さが大事だと言われた結びの儀式。
自分の魂を削ってまで、愛するひとを守る為、彼女を現世に送った彼の想いと、そんな彼に会いたくて、自ら幽世への道を開いて戻ってしまった彼女だから。
その絆は疑いようもない程に深かった。


そんな二人の儀式は、宵宮班のみんなの協力もあり、無事に成功。
彼女が彼の神籬となった瞬間、二人が発した優しく温かな光が、幽世に広がっていたほころびを癒やして行った。


その後、幽世を救った二人をお祝いする祝宴を開きたいと、幽世の住人達からの提案があった為、その場を借りる形で、二人は結婚式を挙げる事に。


神籬という存在はあやかしを惹きつけてしまうから。
だから彼女が彼と魂を重ねた神籬であると、幽世全体に知らせる為に…と、月白が提案してくれたのだった。


そうして迎えた当日。
狐魄神社で行われる婚儀の直前に、彼は彼女の元を訪ねた。
その手に素敵なドレスを持って。


鎮守学舎の夜警隊には、報奨金が支払われていたのだが、特に何にも興味のなかった彼は、今までそれを使うすべがなかった。
今回の婚儀に際し、人間はどんな風にするのか?と、人間である宵宮や奏太に聞いて、貯めていた報奨金を使い、こっそり準備してくれたドレス。


極上の素材で誂えたそれは、世界でたったひとつの彼女の為のドレス。
彼女が幸せな花嫁になれるようにと、彼が愛情を籠めて準備してくれたもの。


彼の用意してくれたドレスを纏った彼女は、幽世一、いや、世界一幸せな花嫁になった。


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愛してる。
これからもずっと幸せにする。



どんな悲しみからも守るって誓う。
ずっとずっと愛し続けるから。



どうか、ずっと、傍にいてくれ。

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